関東私鉄しりとり&サイコロの旅  第7回 


 気がつけばこの企画も7回目、夏真っ盛りの2012年8月7日(火)。今日は珍しく、西武からのスタートだ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
日暮里 → 池袋 JR山手線 各駅停車 内回り 7:57 8:09
池袋 → 西所沢 西武池袋線 急行 飯能 8:17 8:46
西所沢 → 下山口 西武狭山線 各停 西武球場前 8:55 8:57


 田端・駒込界隈の山手線は、相変わらずラッシュ時とは思えない空き方をしている。のんびりと住宅街を走る姿は、郊外電車のようである。池袋に着くと現実に引き戻され、押し寄せる人波やら「なでしこ 金メダル王手」の号外を配る新聞屋さんやらをかわしつつ西武線乗り場へ向かう。ホームに警官が4人も固まっていて何やらトラブルがあった気配だが、委細構わず定刻に扉が閉まる。

 運転席背後から前方を眺めていると、さすがラッシュピーク時で様々な種別の池袋行電車が次々やって来る。間を縫うように踏切が開くが、こちらがかなり接近するまで開きっ放しなのでハラハラする。練馬から練馬高野台までのわずかな区間が複々線。石神井公園まで複々線化されたものだと誤解していたが、出来たのは高架だけで線増工事はこれからのようだ。地平に降りると、次の大泉学園まで複線のまま高架工事中で仮線が敷設されている。上り線はどうにも詰まり気味で、最低でも保谷、できれば清瀬辺りまで複々線にならないものか。

 埼玉県に入ると、ようやく左右の風景に余裕が生まれる。西所沢で降りるとラッシュは終わっていて、西武遊園地にでも遊びに行くらしい親子連れ数組と共に狭山線を待つ。やって来た電車は4両編成だが、空席を大量に残して発車。単線だが線形は悪くないらしく、ビュンビュン飛ばす。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし →
28駅目
下山口   もやまぐ   (西武鉄道狭山線 / 埼玉県所沢市)
下山口駅舎 下山口駅名標 下山口


 狭山線唯一の中間駅で、上下の電車が行き違いをして同時に発車していく。線路の伸びる先、丘陵地帯の中に西武ドームの屋根がひょっこり顔を出していた。

 改札を出て振り返ると、正面に掲げられた駅名看板はCI化されたタイプではなく、建物の色合いもどこか田舎臭い。いかにも支線の小駅だが、バリアフリーの波は今やここまで来ていて、エレベーターが抜かりなく設置されている。駅前広場はなく路地裏の雰囲気だが、少し歩くと商店街に出た。個人商店が多く、のんびりしたムードが町全体に漂っている。この道路の名は「ライオンズロード」。地域密着度がパ・リーグにしては薄い印象のある西武だが、さすがにここまで来ればライオンズ一色である。


29駅目の選択
駅名 会社 路線
西武秩父 西武 西武秩父線
千歳烏山 京王 京王線
千鳥町 東急 池上線
京成千葉 京成 千葉線
千葉中央 京成 千葉線 他
千葉ニュータウン中央 京成 成田空港線


 通算2度目の「ち」。前回は椎名町から近場の千歳船橋を引き当てて切り抜けたが、代わりに入った選択肢はなんと千葉ニュータウン中央。千葉が2つから3つに増えてしまった。東武3つはもう見飽きたが、京成が3つ揃う場面に遭遇するとは思ってもみなかった。

 第1投でいきなり千葉は避けたいところ。いちばん近いのは千歳船橋のすぐ北側にある2で、2回連続の奇跡に期待したい。後々の事を考えれば、所沢まで来ているのだからここで1を消化しておくのもアリだろう。


サイコロ2  → 2 千歳烏山


 本当に千歳が2連続で来た。幸先良い展開だ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
下山口 → 西所沢 西武狭山線 各停 西所沢 9:20 9:23
西所沢 → 秋津 西武池袋線 各停 池袋 9:30 9:37
新秋津 → 府中本町 JR武蔵野線 各駅停車 府中本町 9:44 9:57
府中本町 → 分倍河原 JR南武線 各駅停車 立川 10:00 10:01
分倍河原 → 調布 京王線 準特急 新宿 10:09 10:17
調布→ 千歳烏山 京王線 急行 本八幡 10:19 10:26


 西所沢まで戻ると、池袋線下りホームに東急5050系が滑り込んできた。もう習熟運転が始まっているのかと驚く。西武線内で見る東急車は強烈な異彩を放っているが、来春からはコレが当たり前の光景になる。市の委託なのか西武OBなのか、「安全パトロール」のチョッキをつけたオジサマが傍らの親子連れに「副都心線と繋がるんですよ」と得意げに説明している。続いてリバイバルカラーの101系がやって来て、先程1を出していれば飯能辺りで並びが撮れたじゃないかと臍を噛む。

 秋津駅の改札口には、JR新秋津駅の先発電車の時刻が表示されている。丁寧な案内だが駅は離れており、沿道には西武の駅ビルを皮切りに飲食店がずらりと並んで乗り換え客を取り込もうと虎視眈々だ。対照的にJRの駅舎は、貨物主体として建設された武蔵野線の性格を現して実用一点張り…だったはずだが駅ビルの建設が始まっていた。商売に目覚めたらしい。ホームには撮り鉄がウロウロしていて、何が来るのかと思っていると常磐線のE657系が通過した。

 細かく乗り継いで京王線へ。準特急で調布まで行き、地上ホームに降りるのはこれで最後かなと思いながら急行に乗り継ぐ。すでにデータイムのダイヤパターンになっているが、対向の下り方面にはまだラッシュの残り香があって、急行高尾山口行や通勤快速橋本行といった見慣れない組み合わせの電車とすれ違っていく。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち →
29駅目
千歳烏山   とせからすや   (京王電鉄京王線 / 東京都世田谷区)
千歳烏山駅舎 千歳烏山駅名標 千歳烏山


 追い越しの出来ないホーム、細長い駅舎に小さな改札口。駅前広場も無い最低限のつくりだが急行停車駅で、外に出れば際限なく続く商店街を多くの人や車や自転車が行き交っている。中心がどこなのか今一つピンと来ない世田谷区だが、外来者が多い下北沢を別格とすれば、地元民向けの繁華街としては区内屈指の賑わいかもしれない。旧甲州街道付近まで、人波は途切れることがなかった。

 往来の頭上、区民センターの壁にはオウム信徒の脱会を促す巨大な垂れ幕が下がっている。気持ちは分かるが、余所者の目にはここがオウムの本拠ですよと喧伝しているようにも見えてしまった。


30駅目の選択
駅名 会社 路線
馬込沢 東武 野田線
増尾 東武 野田線
松原団地 東武 伊勢崎線
京成幕張 京成 千葉線
京成幕張本郷 京成 千葉線
町田 小田急 小田原線


 うーん、近いのは6のみ。実に4つが千葉県で、今日のサイコロはどうあっても僕を東に向かわせたいらしい。乗降済(1〜3が未乗降駅)、と言うより馴染みがありすぎる6ではあるが、ここは穏当に都内で済ませたい。千葉県なら、せめて東武。「わ」終わりの1はむしろ当たりクジか。


サイコロ2  → 2 増尾


 候補には幾度も上がっていたが、訪れるのは本企画初となる野田線。どうせなら馬込沢の方が良かったけどまあいいや。OK、OK。

 …と納得しかけたが、よくよく考えると選択肢の中でここが一番遠かった。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
千歳烏山 → 新宿 京王線 快速 新宿 10:56 11:14
新宿 → 日暮里 JR山手線 各駅停車 外回り 11:19 11:39
日暮里→ 柏 JR常磐線 快速
成田 11:45 12:10
柏 → 増尾 東武野田線 普通 船橋 12:14 12:20


 停車駅のやたら多い快速に揺られていると、桜上水でDAX(総合検測車)を見かける。やたらとレアな車両に遭遇する日だ。京王のブレーキが慎重である事は以前にも触れたが、終点新宿では止まらんばかりの最徐行が長く続いてじりじりする。JRへの連絡通路は広告が美術展系で統一されており、京王のイメージ戦略を垣間見る思いだが、通路入口に和田アキ子のパチンコ屋の広告が大々的に出ている時点で台無しである。

 山手線で日暮里まで逆戻り。高田馬場駅ホームで、資料を片手に鉄柱を熱心に観察するYシャツ男性の集団を見かける。歴史系の鉄道マニアか、耐震性の診断か。常磐線に乗り換えると、ポケモンスタンプラリーに興じる親子連れがちらほら。JR東日本とポケモンという強力極まりないこのタッグ、すっかり夏の定番イベントとなった感がある。隣の子は南千住で、向かいの子は北千住で下車。代わりに松戸で正面に座った女性が、猛然と化粧を始めて化けていくのを呆然と眺めるうちに柏に到着。

 東武野田線は、いまだ全車両が抵抗制御車8000系での運転。ホームにも車内にもどこか懐かしさが漂っている。もっとも走り出せば快調極まりなく、あっという間に増尾に到着する。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま →
30駅目
増尾      (東武鉄道野田線 / TD26 / 千葉県柏市)
増尾駅舎 増尾駅名標 増尾


 橋上の改札口を出ると、正面には皮膚科と耳鼻咽喉科と歯医者が並んでいてアルコールの匂いが漂ってきた。胃腸科の広告も出ており、やたらと病院が多い町である。これは子供が多いか老人が多いかのどちらかだなと思いながら駅前広場を見下ろすと、ロータリーに面して葬儀場が建っている。一瞬で結論が出てしまった。

 その葬儀場と千葉銀行の間から緩くカーブした下り坂に沿って、区画整理の済んだ街並が広がっている。人通りは少ないが廃れた雰囲気は無く、成熟した住宅街と言って良さそうだ。大きく広がった木陰に入れば涼しさを感じるが、駅前に戻ればやはり猛烈に暑く、たまらず100円ローソンに飛び込みお茶を購入する。


31駅目の選択
駅名 会社 路線
青梅街道 西武 多摩湖線
大崎広小路 東急 池上線
太田 東武 伊勢崎線 他
京急大津 京急 本線
大鳥居 京急 空港線
大森町 京急 本線


 本来2には大桑(東武鬼怒川線)が入るべきなのだが、実は第2回で隣駅の大谷向に行ったついでに足を伸ばし、乗降済扱いにしてしまった。日光市という立地を考えればあながち間違った判断ではないが、貴重な「わ」終わりを一つ無駄に消してしまった。なんとも間が抜けている。

 それはさておき、随分意地悪な選択肢である。さんざん千葉県におびき寄せておいて、いざ来てみれば次は千葉の可能性ゼロである。この中ならば比較的行き易いのは5・6で、新鎌ヶ谷に出て北総線に乗ればほぼ1本である。


サイコロ6  → 6 大森町


 望み通り6が出た。まあ良しとしよう。大桑が残っていたとすれば6は大鳥居で、大差は無かった。


利用区間 路線 種別 行先
発時刻
着時刻
増尾 → 新鎌ヶ谷 東武野田線 普通 船橋 12:50 13:00
新鎌ヶ谷 → 平和島
北総線
普通
羽田空港 13:24 14:34
京成本線 他
都営浅草線 急行
京急本線 エアポート急行
平和島 → 大森町 京急本線 普通 浦賀 14:38 14:39


 新鎌ヶ谷でやたらとボリュームのあるマックの新メニューを平らげ、北総線ホームに上る。上下共に普通列車がスカイライナーの通過待ちをしている。どちらも室内灯を消して節電中で、律儀な事である。保温のために一部扉を締め切っているのは下り電車だけだが、これは車両設備の差なのでどうしようもない(下りは北総C-Flyer、上りは都営5300形)。

 北総線内ではガラガラだった羽田空港行は、京成に入るとそこそこの乗りとなり、品川で大荷物の客を大量に迎え入れた。平和島で普通車に乗り換え。800形の天井にはラインデリアは無く、扇風機が6台も取り付けられてぶんぶん回っている。扉挟み防止のステッカーは指から血がしたたり落ちる何とも直感的な絵柄で、総じて一時代前の電車の雰囲気である。北陸新幹線開通に備えた「富山県並行在来線準備(株) 社員1期生募集」の中吊りが下がっていて、もうそんな段階なのかと驚く。広告に使われているのは国鉄の急行型電車の写真だが、まだ使う気なのだろうか。まさか、鉄道マニアが多い京急の車内広告だから、通好みの車両をチョイスしたわけでもあるまい。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお →
31駅目
大森町   おもりま   (京浜急行電鉄本線 / KK09 / 東京都大田区)
大森町駅舎 大森町駅名標 大森町


 雑色の3つ手前(品川寄り)の駅で、ここも蒲田付近高架工事の区間内である。上り線のみ新ホームに移行している姿も雑色と一緒だ。下りホームは板張りの仮設で、ちょっと前に流行った書体の案内表示があちこちに描かれている。

 駅前には商店がひしめいているが、屋根は無く人通りも少なく、雑色ほどの賑わいは無い。規模の小ささゆえかシュークリームを売るお茶屋さんやタバコ屋と寿司屋を兼ねた店舗など、ごった煮な店構えが目に付く。電器屋店頭の液晶TVで水樹奈々「BRIGHT STREAM」のPVが垂れ流されていて思わず魅入るが、下町色の濃いこの商店街にはどうにも似合っていなかった。


32駅目の選択
駅名 会社 路線
西武秩父 西武 西武秩父線
千鳥町 東急 池上線
京成千葉 京成 千葉線
千葉中央 京成 千葉線 他
千葉ニュータウン中央 京成 成田空港線
長後 小田急 江ノ島線


 またしても「ち」。そろそろ千葉シリーズから逃げ切れ無い気がする。時間帯も考えれば、どれか1つ(単純に戻るだけの5は回避したい)を訪れた上で、次に近場が出なければ帰宅、というラインが妥当だろう。もちろん最善は、同じ大田区内の2だ。


サイコロ1  → 1 西武秩父


 待て待て待て待て。

 なぜ今朝の下山口ではなく、ここで秩父を出す。前回の静和で懲りていなかったのかーっ!

 今から向かえば、レッドアロー号を利用しても到着は18時前。取って返して自宅に帰り着くのが…今日はここまでですね、はい。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
大森町 → 品川 京急本線 普通 品川 15:11 15:28
品川 → 泉岳寺 京急本線 快特 泉岳寺 15:33 15:35
泉岳寺 → 押上 都営浅草線 快速
成田 15:37 15:59


 まだ陽も高いが、帰宅の途につく。平和島でエアポート急行の接続は無く、鮫洲で快特2本を通過待ちした。京急にしては珍しく消灯した車内は、しんと静まり返っていた。


(つづく)

2012.9.19
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