関東私鉄しりとり&サイコロの旅  第4回 


 4回目のしりとりは2012年6月25日(月)、4回連続の東武からのスタートだ。第2回と同じく快速電車で栃木県を目指すが、前夜の帰宅が遅かったので出発も1時間遅くなった。


利用区間
路線
種別
行先
発時刻
着時刻
牛田 → 北千住 東武スカイツリーライン 区間急行
館林 8:11
8:13
北千住 → 新栃木
東武スカイツリーライン 他
快速
東武日光・新藤原
8:21
9:29
新栃木 → 家中
東武日光線
普通
東武日光
9:46
9:51


 快速は今日も通勤と無縁の行楽ムード。車内にからあげの匂いが漂っている。竹ノ塚駅前のバス用ターンテーブルや、草加界隈にやたら林立する鉄塔や、大袋の脱力させられる名前のホルモン屋などをボンヤリ眺めるうちに郊外へ飛び出して新栃木で下車。車庫所在駅で交代の乗務員がやたら目に付くが、肝心のお客さんの姿は少なく、運転用の駅という印象を受ける。

 日光線普通との接続は悪く、小雨が振り出す中ぼんやりベンチに座っていると、6050系2連というローカル極まりない姿の電車が車庫から出てきた。宇都宮線の上下の電車の発着を見送って出発。走り出せば2駅5分ですぐである。


 あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし →
 しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい →
17駅目
家中    えな   (東武鉄道日光線 / TN14 / 栃木県栃木市)
家中駅舎 家中駅名標 家中


 ホームは島式1面のみ、電車の高さに合わせかさ上げされているのは出口に近い一部だけというつつましい駅である。駅員が「おはようございます」とにこやかに声をかけながら降車客の切符を回収している。「本日は臨時改札を行っております」との看板が出ており、キセル摘発のために社員が無人駅を定期的に(あるいはランダムに)巡回しているものらしい。駅事務室はホーム上にこぢんまりとしつらえてあって、跨線橋を上り下りして駅前に出てみても、駅舎は影も形も無い。

 駅前広場に面したお店は食料品店1軒のみ、しかもブラインドが閉じられている。正面の通りに沿って並ぶのは、床屋に農業公社の庁舎。歩行者の姿は無く、目に付く人の姿といえばポスターに収まった渡辺喜美だけである。

 ところが県道に出ると、どちらの方向にもひっきりなしに車が行き交っている。自家用車保有台数の多さで有名なのはお隣群馬県だが、やはり北関東は全般に、日常移動は車頼みなのだろう。蔵を持つ農家もあってさすが栃木市と感心したが、市役所の支所にしては随分立派な建物が県道に面しており、どうやら平成の大合併で栃木市に吸収された土地らしい。旧中心街らしく集落の規模は大きく、裏通りにはひっそりと教会が建っていた。


18駅目の選択

駅名
会社
路線

梶が谷
東急
田園都市線

春日部
東武
伊勢崎線 他

霞ヶ関
東武
東上本線

加須
東武
伊勢崎線

花月園前
京急
本線

神奈川
京急
本線


 酷い顔ぶれである。何が酷いって、「か」始まりの両隣の駅(合戦場・東武金崎)がどちらも入っていないのだ。なんだコレ。

 圧倒的に遠いのは6だが、「わ」終わりなので痛し痒しと言った所。中途半端に5が出るよりはよほど良い。楽なのは都心へ帰る途中の2。ただし、次の「へ」の顔ぶれを鑑みると当たりとは言い難い。一応付け加えておくと、3は東京都心では無い。

 という訳で本日の第1投であるが、前回あまりにも6(と1)に偏ってしまったので、サイコロキャラメルにはご退場願う事とした。いささか神経質であるが、サイコロは本企画の根幹を成すアイテムだから、コイツが信頼できないようでは困るのである。更に言えば、衆人環視の駅のホームでサイコロを振る姿は、客観的に見て非常に不審である。マニアだろうと何だろうと、一応の羞恥心というものが自分にもある。

 代わって使用するのは、HODADE SYSTEMSさんが製作されたツール、電子サイコロである。これなら偏りは無いだろう。

 ポチっとな(世代がばれるなあ…)。


サイコロ4  → 4 加須
※今回からサイコロはイメージ映像です(苦笑)。


 今まで一度も出なかった4が出た。電子サイコロ、空気が読める子だ。


利用区間
路線
種別
行先
発時刻
着時刻
家中 → 新栃木 東武日光線 普通 新栃木 10:16
10:22
新栃木 → 栗橋
東武日光線
普通
南栗橋
10:29
11:09
栗橋 → 久喜
JR宇都宮線
普通
上野
11:13
11:20
久喜 → 加須
東武伊勢崎線
普通
館林
11:24
11:35


 上り電車に乗り込んだのは僕1人、下車客はゼロである。駅裏でバラストを抱えたブルドーザーが動き回る新栃木で、10030系の普通列車に乗り継ぐ。往路と同じ線路でも、2扉ボックスシートの快速とは随分乗り心地が違ってくる。相変わらず利根川付近の県境の入り乱れっぷりが理解できず、いささか混乱したまま埼玉県に戻り、東武動物公園まで行かず栗橋でJRに乗り換えショートカットする。途中、東鷲宮駅付近のニュータウン的光景に目を丸くする。この駅、そんなに最近の開業だったっけ…?

 お馴染みの久喜で伊勢崎線に乗り換え。今日は3つ目の加須までだからすぐである。


 あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし →
 しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか →
18駅目
加須   かぞ   (東武鉄道伊勢崎線 / TI05 / 埼玉県加須市)
加須駅舎 加須駅名標 加須


 「かす」ではなく「かぞ」。知ってはいたが難読地名である。総じて地味な埼玉の衛星都市群の中でも影の薄さは屈指と思っていたが(失礼)、福島県双葉町の全町避難先として今や全国に名が知れ渡ってしまった。日本中どこの商店街にも掲げられている「がんばろう」の文字が、ここではとりわけ重い。

 駅舎は系列のSC、東武マインに取り込まれた形になっており、駅前広場は大きく綺麗に整備されている。早い話、前回のみずほ台と一緒である。「こいのぼりの町 加須へようこそ」とキャッチフレーズが掲げられ、「こいのぼり焼」なる食べ物の売店もある。どうやらこいのぼりが名産らしい。

 駅前の地図を見ると、随分用水路が多い。手近な水路まで目抜き通りを歩いてみる。ややシャッター街めいているが、ちょっとしたデパートのようなビルを構えた人形店や、こんな田舎に(だから失礼だ)証券会社まであり、ただならぬ風格が伝わってくる。水路に架かる橋の上に、鯉のオブジェが鎮座していた。

 さて、次は「そ」。リストを開いて絶句した。


19駅目の選択

駅名
会社
路線

草加
東武
伊勢崎線

宗吾参道
京成
本線

雑色
京急
本線

相武台前
小田急
小田原線










 「そ」は4駅しかなく、しかも全て乗降済みである。それは構わないのだが、2が大問題だ。前回のうすいの悪夢も覚めやらないと言うのに、またしても午前中に京成、しかも地元を通り越してほぼ最果ての宗吾参道である。尻込みしている理由はロケーション以外にもあるのだが、とにかく2は全力で回避したい。楽なのは勿論1だが(ただし、前回から5駅連続の東武になってしまう)、この際3も4も許容範囲だ。頼むよー。


サイコロ3  → 3 雑色


 ようし、切り抜けた。都内なら御の字だ。


利用区間
路線
種別
行先
発時刻
着時刻
加須 → 久喜 東武伊勢崎線 普通
久喜 12:15 12:25
久喜 → 大崎
JR湘南新宿ライン
快速
逗子
12:29
13:27
大崎 → 品川
JR山手線
各駅停車
内回り
13:28
13:31
品川→ 京急蒲田
京急本線
快特
三崎口
13:32
13:40
京急蒲田 → 雑色
京急本線
普通
浦賀
13:42
13:44


 今来た道を引き返す。久喜手前で、JR線への乗り換え案内がなぜか英語でだけ流れる。日本語は車掌が喋るので録音していない、という事なのだろうか。他社なのに接続時刻の丁寧な案内と、今日何度目かの昨日の遅延(久喜〜鷲宮間での踏切障害)のお詫び放送があって扉が開く。1時間ぶりにJRのホームに降りると、設置工事中の自動販売機の方向が先刻から90度変わっていた。くたっと眠り込んで、気がつけばもう駒込辺りを走っている。

 京急品川駅に立つと、今度は電光掲示板の英語表示が気になってきた。たしか特急も快特も「Ltd. Express」だったはずなのに、快特が「Rapid」になっている。ちゃんと区別したのは良いが、Rapidの方が速いというのも妙な話である。2100系が来たが、深く考えず付随車に乗ってしまってモーター音が聞こえない。


 あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし →
 しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ →
19駅目
雑色   うし   (京浜急行電鉄本線 / KK18 / 東京都大田区)
雑色駅舎 雑色駅名標 雑色


 前回訪れた六郷土手の隣駅で、蒲田付近の高架化工事の区間内に位置している。現在は上り線だけが新ホームに上がっており、改札も2ヶ所に分かれている。京急お得意の、既存線の真上に高架橋を作る(日照権はどう処理しているのだろう)直上方式で施工されているため、地平に残った下りホームは真っ暗である。駅前の踏切は単線にもかかわらずしょっちゅう閉まり、快特が100km/hオーバーのフルスピードで容赦なく駆け抜けていく。

 普通車しか止まらない駅だが、商店街の規模は目を見張るものがあった。アーケードがずっと続き、人も自転車もバイクもひっきりなしに駆け抜けていく。屋根が終わっても商店街はまだ続き、どん詰まりにJRの線路が見える。あちらも踏切だ。東京だというのに商店主と通行人は顔見知りらしく、気軽に挨拶が交わされる。こういう町、悪くない。

 国道15号に面したラーメン屋さんで遅めの昼食。さて、後半戦だ。


20駅目の選択

駅名
会社
路線

木崎
東武
伊勢崎線

北大宮
東武
野田線

北春日部
東武
伊勢崎線

北久里浜
京急
久里浜線

北野
京王
京王線 他

喜多見
小田急
小田原線


 近距離と言えるのは、世田谷区の6のみ。折角脱出した東武が3つも入っている、実に困った顔ぶれだ。東武3駅なら位置的にマシなのは3だが、18駅目の選択で触れたように、その後の「へ」がマズイ。先程春日部を引くよりも、数段マズイ。無論、加須よりも東武和泉よりも先にある1が一番マズイ。どうにか6を出して、穏便に事を運びたい。


サイコロ3  → 3 北春日部


 あーあーあー。


利用区間
路線
種別
行先
発時刻
着時刻
雑色 → 京急蒲田 京急本線 普通
品川 14:26
14:28
京急蒲田 → 品川
京急本線
快特
青砥
14:36
14:42
品川 → 上野
JR京浜東北線
快速
大宮
14:49
15:03
上野 → 北千住
JR常磐線
快速
勝田
15:12
15:23
北千住 → 北春日部
東武スカイツリーライン
区間準急
久喜
15:29
16:10


 中途半端な時間の割に、上り電車は混んでいた。快特を乗り通して押上まで行けばスカイツリーラインに乗り換えられるが、変化をつけたい気分になってJRで上野に出る。常磐線のボックスシートに座ってせわしなく人が行き交うホームを眺めていると、旅行気分が高まってくる。昔ながらの発車ベルが構内に響き渡る。やはりこの駅、独特である。

 自分の周りには、団塊世代と思しき女性3人組が座った。目的地に特別快速が止まらないため1本見送った様子で、停車駅談義に花が咲いている。

 「今はこれも三河島とか止まるのよねえ」

 −そう、ちょっと前まで常磐線の中距離電車は三河島と南千住を通過して、103系快速と格差をつけていた。

 「ほら、昔は"赤電"で…」

 −無論京成の話ではなく、つくば博(1985年)以前の中電のカラーの話。直に見た記憶は無いが、我が家にはこの色のオモチャがあった。

 「赤電って、北千住にも止まらなかったのよ」

 −それはさすがに知らないぞ。

 …と全く興味の無いフリをして車窓を眺めながら、耳はダンボ状態である。

 北千住から本日2度目の北上。車内アナウンスは遅れのお詫びから、いつも通りのスカイツリーPRに戻っていた。春日部なんてすぐそこだと思っていたのに、意外に時間がかかった。どうも感覚が狂ってきたようだ。


 あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし →
 しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ →
 ぞうしき →
20駅目
北春日部   たかすか   (東武鉄道伊勢崎線 / TS28 / 埼玉県春日部市)
北春日部駅舎 北春日部駅名標 北春日部


 島式1面の両側に通過線を抱える、ちょっと変わった配線の駅である。北側に車庫が広がっていて、特に普通列車にとっては、運転上の拠点と言って良い。

 しかし電車の行き来とは対照的に、人の姿は少ない。駅前に下りてみても目の前の工業高校が目立つ程度で、スーパーはおろかコンビニすら無い。ほぼ東武社員専用の駅なのだろうか。車庫だけではなく研修所もあるようだし、近隣の葬儀場までもが東武系列である。何も無い駅なのだな、と結論を下しかけたところで大学のスクールバスがやって来て、辺りは突然賑やかになった。

 さて、今日はなぜ「へ」終わりを忌み嫌っていたのか。顔ぶれを見て頂こう。


21駅目の選択

駅名
会社
路線



平和島
京急
本線



逸見
京急
本線


 2択。どっちに転んでも京急。1つは先程行ったばかりの雑色のすぐ手前。もう1つはずーっと先。北春日部を引いた時の絶望を、少しでもお分かり頂ければ幸いである。と言うか、今日は東武と京急だけじゃないか。

 例によって次の次の選択肢を念頭に置くと、今来た道を戻るだけであっても平和島なら行ってしまいたい。逸見なら次回送りだ。


サイコロ5  → 5 逸見


 はい終了。


利用区間
路線
種別
行先
発時刻
着時刻
北春日部 → せんげん台 東武スカイツリーライン 普通
中目黒 16:32
16:42
せんげん台 → 押上
東武スカイツリーライン
急行
中央林間
16:44
17:08


 帰りの普通列車は、広告が全てタフマンで埋め尽くされている。他社でも見かけるこの広告、どんなスタイリッシュな新型車両でも野暮ったく見せてしまう、不思議な力を持っている。正直好きではないが、広告は目立ってナンボ。事実、次々乗り込んでくる大学生が皆バカウケしている。

 サイコロを変えてみたら、6には偏らなかったけど東武に偏った第4回。仕上げとばかりに押上に足を延ばし、スカイツリータウンを一瞥してから帰宅の途についた。


(つづく)

2012.8.11
Copyright(C)tko.m 2012

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