或る3日間のヨコハマ  〜 3. みらいが今動き出した(2004.2.1)
馬車道駅、進入。


元・中駅
 2月1日。みなとみらい線(MM線)開通の日である。

 昨日と同様にお昼前に家を出て、相鉄線で真っ直ぐ横浜駅へ向かう。横浜駅到着直前の、ある乗客の会話。

「MM線って、横浜市営なんでしょ?」

 違う違う、横浜高速鉄道(株)の路線だって。横浜市も出資しているけど、他にも県とか東急とか相鉄とか。だから東急横浜駅に、他社(京急)のキオスクがあるわけで。

 と、一人心のうちでツッコミを入れつつ、相鉄1F改札からJRに乗り換える。ここに「JR相鉄口」という相鉄なのかJRなのかさっぱり分からないJRの改札口があったが、昨日からは「みなみ西口」という、これまた西口なのか南口なのか良く分からない名前に改称された。JRコンコースは自由通路と変じ、改札口はその途中に移設された。

 自由通路の入口には、JRの看板が「相鉄口」の文字だけ消されてそのまま残されている。これではJRの専用通路みたいな印象を与えよろしくない。もっとも、相鉄側には「国鉄線」の表示の上にワープロ書きの紙を貼っただけの案内板がまだ残っているのだが…

 根岸線で横浜を後にすると、東横線"跡"が並行する。高島町ホームに人がいないのはいつものことだが、桜木町ホームにも誰もいないというのはやはり寂しい。

 JRホームから見下ろす桜木町駅前は、お昼時なのに閑散としている。休日にMMに来ることは滅多にないから断言は出来ないが、やはりMM線沿線に人が流れているのだろうか。野毛側のぴおシティが、「祝 馬車道駅開業」というなんとも苦しい垂れ幕を出している(馬車道のホームまでは徒歩10分弱)。

 石川町で下車。ここからMM線の終着駅元町・中華街(ツウは"元・中駅"と呼ぶ、らしい)へと向かう。元町商店街の人通りは、浜銀あたりでは石川町側からの流入が主であったが、やがて向こう側から続々と人が押し寄せてくるようになる。

 人波をかき分けて元・中駅に到着。「開通記念パスネットは売り切れました」の掲示を横目に長いエスカレータを下る。上りエスカレータの人波は全く途切れることがないが、下りはガラガラ。元・中側から試乗しようとの目論見は正解だったようだ。

 ホームはまさに芋を洗うような混雑を呈していた。中央部の地下駅と思えない大空間と、その中を一息に昇っていくエスカレータのデザインは見事だが、混雑に対応はしきれていないようだ。「後ろよりにもエスカレーターがあります」という放送がしきりに流れる。

 ホーム先端にはファンが集結している。普通、地下駅の先端は階段かコンクリの壁に阻まれているものだが、ここは線路がすっきりと見通せる。ゴゴゴ…とポイント作動音が響いてカーブの向こうから電車がやってくる様は、なかなかに壮観である。

 東急8000系の先頭部に陣取り、いざ試乗開始。ホームの混雑を警戒してか、電車はしばしゆっくりと徐行してからぐいっとノッチを入れた。思いのほか駅間距離が開いて、日本大通り着。白をベースにレンガ調を織り交ぜた、落ち着いた意匠の駅である。

 次の馬車道駅までは直線区間。振り返れば日本大通りの明かりが見える。ホームは日本大通りと似たレンガ調だが、ずっと赤みを増して重厚な印象を受ける。そして何より、改札口頭上の大ドームに圧倒される。このMM線、駅構内のデザインへのコダワリが尋常ではない。もし「関東の駅100選」の選出前に開業していたのなら、全駅ランクインしそうな勢いである。

 ここまで複線シールドだったトンネルは、次のMM駅まで単線シールド2本に変わって大岡川の下をくぐる。上り線のトンネルには銀色の管が2本とりつけられている。馬車道駅の冷房用に、MM駅から送られてくる冷水管である。

 日本大通り・馬車道と混雑はさほどでもなかったが、さすがにMM駅は物凄い人出となっていた。中間駅、という事情もあろうが、ファンよりも一般客の方がはるかに多く、有名スポットの貫禄を示している。

 ホーム横浜寄りは比較的落ち着いたデザインだが、元・中寄りまで歩くとあっと驚く仕掛けが待っている。B4Fのホームが、クイーンズスクエア横浜の吹き抜けと直結しているのである。2Fキャラクターショップのスヌーピーの風船が、はるか上空に小さく浮かんでいる。幾度となく通り抜けたクイーンモールを新駅から見上げる、というのは予想されていた眺めではあるが随分と新鮮だ。次々と到着する電車から降りた人々が、皆一様に感嘆の声を上げて頭上を仰ぎ見る。

 クイーンズスクエア連絡口の混雑は元・中駅と同様かそれ以上だった。改札を出るのにも入るのにも黒山の人だかり。男子トイレからは煙感知器らしきサイレンが鳴り響き、駆け込んだ女性駅員が「あっ」と立ち止まる。

 一方、横浜寄りの改札は閑散としており、空調ダクトをカラフルに塗り分けたコンコースをじっくりと眺めることも出来る。元・中駅も含め、MM線は渋谷側の車両・出口が空いていてねらい目のようである。

 3番出口(美術館口)から地上へ出ると、そこは空地の真っ只中。確かに美術館は目の前だが、道が通じていない。向かい側4番出口(国際大通り口)も同様で、まだまだ開発はこれからだ。

 徐々にダイヤが乱れてきたのを気にしつつ、隣駅の新高島へ。一時はゆりかもめの汐留駅のように全列車通過となる話もあったほど、周りには何もない。が、ホームには意外にも利用客の姿が。初老のおっさんが、ウォシュレットのパンフレットを熱心に眺めている。なるほど、MM大通り沿いのINAXショールームやPCデポあたりも駅勢圏に入るらしい。

 線内唯一の対向式ホームの新高島はホームのデザインも他と一線を画しており、ひどくメタリックな印象を受ける。なんか、カッコイイ。

 それはそうと電車が来ない。「元町・中華街の混雑で3分遅れ」との放送が流れるが、既にその3分は過ぎている。案内表示の発車時刻が、ついたり消えたりしている。どうやら5分遅れると時刻表示が消えるらしい。まあ、開業初日に混乱は付き物ではある。文句を言っても仕方がない。

 やって来た各停は、乗り込むのもやっとの状況。次の横浜でどっと降りるが、乗車も多く大盛況である。昨日電車を眺めた公園を見下ろしながら地上に出て、東白楽・白楽とまとまって乗客を降ろすとどうやら車内は平静を取り戻す。僕も白楽で下車。

 初めて降りた駅だが、ホーム元・中寄りからはランドマークタワーとメディアタワーの鉄塔が良く見えている。天気が下降気味で薄暗くなり始めているが、構図自体は僕好みなポイントである。今度午前中に来てみようかと思う。

 菊名経由で帰宅しようかとの考えもよぎったが、結局東横線で横浜駅へ逆戻り。人波をかき分けて相鉄線に座るや否や、ぐっすりと眠り込んだ。

 後に聞いたところによると、この日のMM線の利用者数は34万人に達したという。これは横浜高速鉄道の予測した当初利用者数14万人の倍以上であるばかりか、将来予測の24万人をもはるかに上回る。開通景気による利用者増が多分に含まれるとはいえ、まずはめでたい。一方で高速鉄道には、混雑の激しさと記念切符類の準備数の少なさに苦情が殺到しているという。まだまだ運営には手馴れていない会社、大目に見ていただければと思う(当方社員ではありません、念のため)。

 元・中駅であるスタッフが、人ごみにもまれながら、「いつまでもつか…」と笑っておられましたが、まだまだ、これから!MM線が、そしてヨコハマが多くの人に愛されることを願って止みません。
日本大通り駅
馬車道駅
みなとみらい駅
みなとみらい駅コンコース
新高島駅
白楽にて

2004.2.8
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