TOKYOちかてつWALKER・第16回



汗、だく・だく・だくりんかい線

品川シーサイド〜大崎(品川区)




りんかい線路線図

 2008年7月27日(土)、りんかい線品川シーサイド駅は静まり返っていた。時刻は8時55分。

 周囲は絵に描いたような再開発エリアで、高層マンションにオフィスビル、ショッピングセンターと一通りの物が揃っている。少々類型的に過ぎるきらいがあり、個性は皆無に等しい。「楽天タワー」という表記に、はてこんな所にタワーなんてあったかなと首をひねる。ごく普通のビルである。

 シーサイドの名に反し、駅前道路から海(というか運河)は見えない。間には古びた倉庫や階高の低い港湾住宅が並んでいる。再開発の波もどこ吹く風、といった感があるが、虫食い上に侵攻を受けてマンションが建っていたり建てている最中だったりする。運河上を走る東京モノレールが、ちらりと見える。その向こうは八潮の清掃工場だ。

 品川シーサイド駅を出たりんかい線は、再開発地区の外周をぐるりと回る。地下の線路に沿って南東の角を90度右折すると、敷地が尽きて歩道の幅が5分の1程度になってしまう。八潮団地から渡ってきた橋が合流し、都バスがひっきりなしにやって来る。
旧東海道
  程なく幅広の道路と直交する。道の名は「海岸通」。ここが海べりであったのかと改めて驚く。まわりはぐるりと建物に囲まれ、東京湾は八潮の更に先まで遠ざかった。交差点を境に街並みはぐっと庶民的になり、公園や小住宅がごく当たり前に連なっている。前方に京浜急行の高架線が見え、小綺麗に路面がタイル張りされた商店街が現れる。表示がなければ、この商店街が旧東海道とは誰も気づくまい。

 京急の高架をくぐり、国道15号を渡る。振り返れば、南側に鮫洲駅、そして北側に青物横丁駅が冗談みたいな近距離で並んでいる。1000系上り普通車が、今にも止まらんばかりの徐行をしていた。鮫洲で後続電車に道を譲ったはいいが、その優等列車が青物横丁に停車中で走るに走れないようだ。ちなみにりんかい線は、両駅いずれとも接続を取らずに、人知れず地下を走る。

 国道15号を越えると道はにわかに登りにかかる。「仙台坂」と表示の出たこの坂は、先に歩道が急勾配を上り、車道の真上を通行するという変わったつくりをしている。地上部を通るのは歩行者と地元の車だけでありよく出来た設計だが、仙台坂自体の交通量はさほどとは思えない。いかなる経緯でこうなったのかと思う。脇道から廃品回収のトラックが顔を出した。拡声器の音質がばかに良い。

 再び車道と合流し、池上通と斜めに交差すると大井町の商店街に入る。間口の狭い店が並び、裏通りには飲み屋が林立している。9時25分大井町着。

 JR線をまたぐと、商店街は下り坂に転じる。電車に揺られていると気がつかないが、大井町駅は台地のてっぺんに位置しているらしい。向かって右手、並行する東急線との間に1フロア分の高低差が出来て高架下に店舗が並ぶ。左側はイトーヨーカドーだが、如何なる事情なのか駐車場には昔ながらの鳩マークが掲げられている。そうそう、やはりヨーカドーはこのマークでなくちゃ駄目だ。

 東急線の向こう側はJR大井工場で、高架下商店街が途切れて社宅の入口が現れる。傍らには地下へと降りる、怪しげな階段が。この商店街、上下二層らしい。地下は飲み屋オンリーで、この時間は立ち入り禁止になっている。一層アヤシゲである。

 りんかい線はこの辺りで北へカーブを切るが、曲がった先は工場敷地内で勿論入れない。敷地が切れた所で右折して東急線のガードをくぐる。線路際にぴったり家が張り付いている。

 すぐに工場と道路に挟まれる形で、品川区役所が現れる。品川駅が品川区ではなく港区だ、という逸話は有名だが、じゃあ品川区役所はどこなんだと問われれば皆目分からなかった。こんな所にあったのかと思う。古びたタイル張りの、オーソドックスな役所建築である。

 区役所を過ぎると、道は再び下りにかかる。左手の斜面には見事に蔦が絡んでいる。右側はようやく全貌を現した大井工場、と思いきや「東臨大井町変電所」とある。敷地の一角を拝借したに違いない。やっと工場に接すると、電車のクーラーが積み上げられているのが見える。反対側の家並が途切れ、不意に線路が現れた。湘南新宿ラインが走る貨物線である。右も左も鉄道施設ばかりになってきた。

 狭いガードで湘南新宿ラインをくぐり、JR敷地の西端に沿って進む。電柱に記された地名は西品川。品川シーサイド駅が東品川だったから、ぐるっと大井を迂回して品川に戻ってきた格好だ。沿道には町工場とマンションが交じり合っている。海洋生物研究所、というよく分からない建物もある。ひときわ綺麗な建物は消防署である。そろそろりんかい線が地上に顔を出す頃だが、湘南新宿ラインの高架壁に遮られ何も見えない。

大崎駅付近  2層建てのタクシー営業所が現れる頃、右手には大崎駅構内が見えてきた。E231系が緩やかに徐行する。今頃車内では、「Please change here for the Tokyo Rinkai Kosoku Tetsudo Rinkai Line.」と、早口言葉としか思えないようなアナウンスが流れているのだろう。

  程なく道は上下線に分かれ、中央分離帯上に歩道橋が現れる。なんでこんな所に階段があるのかと思う。信号を渡って(この時点で無意味な橋である)上ってみれば、湘南新宿ラインとりんかい線の上下線を一息にまたぎ、すぐ向こうには山手線が見える。振り返れば目の前に横須賀線の高架、その真上には新幹線が通じている。絶好の展望台だが、電車が接近するとゆらゆら揺れる。だいぶ古びている。

 この歩道橋を渡ると大崎駅の表側に通じる地下道へと繋がるのだが、トンネル内は一部歩行者通行禁止らしい。もと来た側に戻って線路沿いに進む。このまま行けば大崎駅西口だが、先程行く手を阻まれたトンネルの、歩行者入口が現れた。薄気味悪く暗い階段を下り、ガードレールで狭く仕切られたトンネルに闖入する。すぐに明かり区間に出たが、ここが湘南新宿ラインとりんかい線をくぐった地点らしい。もう一度トンネルに入ると山手線の内側に出る。

 こちら側も線路沿いに建つのはJR関連施設ばかりで、先程から鉄道尽くしである。10時15分大崎着。暑さを避けて朝から歩いてみたが、ゲートシティへの通路上の温度計は既に29℃を表示していた。


(つづく)

2008.8.24
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