完乗へのファイナルラン 


−  2008.7.20朝現在  未乗線区数 9本   残存距離 137.9km  −
東京地下鉄副都心線 池袋−渋谷 8.9km(2008.6.14開通)を含む

▼ 第5回 関東地方(2008.7.20)

上信電鉄 言うまでも無く、関東地方はホームグランドそのものである。本来ならばとっくに全線完乗を果たしているべきだが、残存線区が一桁となった現在でも、まだ乗っていない線がある。

 膨大な東京圏の通勤線群はまだ良かった。都市鉄道は嫌いではない−むしろ大好きだ−ので、気の向くままフラフラしていればいつの間にか完乗出来てしまう。問題は北関東で、日帰りでは強行軍が避け得ないが、せっかくの連休を群馬や栃木ごときで潰したくもない。どうしても後回しになってしまう。先人の足跡を振り返っても、宮脇俊三氏(東京都在住)の国鉄完乗は足尾線(現・わたらせ渓谷鐵道)だし、横見浩彦氏(神奈川県在住)の全駅乗下車達成は上信電鉄である。経緯は人それぞれだが、残りやすい、または残しやすいエリアなのである。

 僕の場合、関東地方で最近まで残っていたのは上記2線と東武伊勢崎線(太田以遠)であった。昨年のGWに一息に片付けるつもりだったのだが、仕事が尋常ならざる忙しさで、5時起きのプランなぞ実行できず西端の上信線をカットした。今回はそのリベンジだが、前回から1年以上間が空いた辺り、やはり気力は乏しいようである。

***

 7月20日(日)、お昼前の相鉄線に乗って横浜駅着。目指すは上信電鉄上信線1本、早起きなんて不要でのんびりしたものである。が、少々のんびりしすぎたようで、目星をつけておいた11時48分発の湘新特快には間に合わなかった。帰りは大宮からホリデー快速に乗ろうと決めているから、これ以上遅れると肝心の上信線が単純往復になってしまう。

 やむなく券売機に並び、新幹線の特急券を購入。たるみ過ぎである。後続の湘新ラインで大宮に出て、13時18分発「Maxとき」411号越後湯沢行に乗り換える。

 予定外の新幹線乗車だが、これはこれで旅気分に浸れて中々宜しい。適度に空いた2F席から鉄道博物館を見送ると、辺りは見る間に田園風景となる。大宮で買った駅弁をほおばり、車内誌に目を通す。相変わらず内舘牧子は変な事を書いているなぁと思っていると熊谷に到着。商店街を山車が何台も練り歩いている。まだ東京圏だが、新幹線から見るとひとかどの地方都市に見えてくる。それにしても暑そうだ。

 本庄早稲田の何も無さっぷりに目を丸くして、13時52分高崎着。この駅のコンコースは広く真新しく、地方都市としては上々の出来栄えだと思っているが、上信電鉄のホームは駅ビルのはずれから長い長い通路を歩かねばならない。構造からしてかつてはJRからフラットに乗り換えられたはずで、ここだけ進化から取り残されたかのようだ。フリー切符の類は無いとの事で、そば屋のような簡便な券売機で下仁田までの乗車券を買う。1,080円也。
下仁田にて
 1本きりのホームに停まっているのは、元・西武新101系2連である。譲受時には、とうとう"新"101がお払い箱になる時代なのかと愕然とした。一昔前まで意欲的なオリジナル車を導入していた上信電鉄、ファンからすれば中古車受入は忸怩たるものがあるだろうが、西武ファンの僕としてはこの車両、「当たり」である。

 14時08分高崎発。すぐに車庫の中に突っ込んだような格好になり、色とりどりの全面広告をまとった電車の間をすり抜ける。次の南高崎を出ると、新幹線の高架下という妙な場所に信号所が現れ上り電車と交換する。高崎からはちょっと距離があり、ここまで1閉塞では朝夕のダイヤ作成は大変だろう。

 市街地はすぐに尽き、電車は田園風景を見下ろしながら登りにかかる。途中の高崎商科大学前駅には山間地の風情すらあり、もう山岳区間なのか、これじゃあ沿線人口も少なくて大変だろうなと思いかける。ところが次の山名を過ぎると、再び道は平坦になった。昼間の割には乗客は多いし、案外人里の中を走っていくようだ。ただしスピードはさほどではなく、懐かしい101系の高速走行サウンドにはなかなか接する事が出来ない。

 吉井でまとまった降客があり、なおも淡々と走ると畑の中で停車する。列車交換だが、信号所を出ると1分もせずに上州新屋である。駅で行き違えばいいのに、妙な配置だ。

 次の上州福島が横見浩彦氏の全駅乗降達成駅で、なるほど駅舎は中々の古び方をしている。駅前の商店群もばっちり昭和テイストである。もっとも、福島に限らずこの線の駅は大抵が時が止まったかのような姿をしている。この後は公園風の東富岡、コンクリ造りの上州富岡と続くが、西富岡から先は再び年季の入った駅舎のオンパレードだ。きちんと整備すれば大変な観光資源となろう。

下仁田駅  千平を出ると、車窓はにわかに、そして今度こそ山深いものになっていく。急な山肌に取り付けられた線路を、急カーブにきりきり悲鳴を上げながら電車は登っていく。時刻表を見ると、次駅までの間に行き違い設備があるらしい。次は終点の下仁田である。どうもこの鉄道、変わった位置の信号所が多い。ダイヤグラムを作ってから場所を決めたのではないか、とすら思えてきた。

 しかしそれらしき設備が見つけられぬまま、車窓に集落が現れた。この辺でおしまいにしておきましょうか、といった風に電車は緩やかに速度を落とす。15時07分下仁田着。構内は広いが、集落の中にひっそりと忍んでいるような駅であった。

 折り返し電車の中で、今度こそは信号場を見落とすまいと目を凝らす。やがて崖下に無理矢理取り付けたかのような行き違い設備が、カーブの向こうから対向電車と一緒に姿を現した。


*今回の乗車路線*

会社名
路線名
区間
距離
1
上信電鉄
上信線
全線
33.7km

−  2008.7.20夜現在  未乗線区数 8本   残存距離 104.2km  −

(つづく)

2008.10.4
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