神奈川外周気まぐれ!?列車(&バス)


▼第2回 登戸駅(川崎市多摩 区) → 中央林間駅(大和市) 2006年9月17日(日)

 前回登戸で打ち切ったのは、稲田堤駅からのバスの便を考慮してのものであった。朝夕に偏った不便なダイヤなのである。しかも休日には、1日2本の運転にまで減便されてしまう。

 当然のことながら、第2回は土曜日実行が必須ということになる。ところがどの週もことごとく土曜日に予定が入り、前回から丸2ヶ月も間が開いてしまった。待ちきれず僕は、日曜日に家を飛び出し登戸へ向かった。

 今日は多摩エリアを避けて、ぐるりと南下する。淵野辺駅(相模原市)まで行きたいところだが、途中の乗り継ぎに失敗すれば中央林間駅で打ち切る。

登戸−稲田堤
(1)〈通算12〉 登戸 8:15 → 稲田堤 8:20
  JR東日本 南武線 各停 [川崎→立川]
  橋上駅舎が新築されたことは喜ばしいが、登戸のホームは地下駅のように真っ暗になってしまった。205系オリジナル車の立川行に乗車。いつもながら混んでいる。

 運転台後ろから眺めていると、線路敷きには雑草が茂り緑色に染まっている。どこのローカル線か、と思うような風景である。

 古びた稲田堤のホームに降り立つと、前方に京王相模原線の高架橋が見える。あれに乗れば津久井郡の入口・橋本まで20分足らずだが、この旅では今日中にたどり着くことが出来ない。間に横たわる多摩ニュータウンはバリバリの東京都で、足を踏み入れるわけには行かないのだ。

城下−女子大前
(2) 城下 8:35 → 女子大前 8:45
  小田急バス 読05系統 [城下→生田営業所]
 多摩川を遡ってきた外周ルートは稲田堤で南へ向き、小田急読売ランド前駅を目指す。小田急バスの読04系統がこの経路を直通するが、8時31分から17時09分までぽっかりと開く不便なダイヤである。沿線の菅高校の生徒くらいしか相手にしないバスなのだろう。

 残念ながら今日は休日で、午前中の読04系統は6時41分発1本きりである。さすがにこのバスのために6時台に来る気は起きなかった。

 JRの改札を出て、京王稲田堤駅へ向かう。両側に商店が建ち並び、昔ながらの「正しい商店街」という印象を受ける。5分ほど歩いた先で京王の駅構内を通り抜けると、そこにバスターミナルがある。「京王駅前」とでも名乗って問題ない立地だが、なぜかバス停名は「城下」。JR稲田堤駅の2つ先のバス停で、ここからは区間便(読05系統)が20分毎に運転されている。時刻表を見ると、稲田堤始発便には印がつき、南武線の踏切通過に時間がかかり遅れる由の注記があった。

 城下には川崎市バスと小田急バスが半々に入るようだが、読05系統は小田急の運行である。今日は小田急バスばかりなので、1日乗車券(500円)が役に立つ。

 わずか4人の客を乗せたバスは、綺麗に整備された住宅街の中を登っていく。馬場の交差点を左折すると、なんだか見たことのある風景となって女子大前で下車。一緒に降りた高校生2人は校門の向こうに消えた。 

女子大前−大久保
(3) 女子大前 8:48 → 大久保 8:57
  小田急バス 読01系統 [寺尾台団地→京王よみうりランド駅]
 女子大 前。凄い名前のバス停ではある。固有名詞も何もなしに、いきなり「女子大」。名前なんか出さなくても分かっているでしょ、と言わんばかりの態度であり、実際バス通りから見る限りは馬鹿でかい敷地のように思える。ちなみに車内放送では、「日本女子大前」と学校名を告げていた。

 乗り継いだのは小田急読売ランド前駅・よみうりランドを経由して京王よみうりランド駅へ至るという、この界隈の地名施設名のややこしさを体現したかのようなバスである。1つ目の小田急駅で乗客は全員入れ替わり、遊園地へ至る登り坂に取り付き始めたところで下車。

大久保−千代ヶ丘
(4) 大久保 9:21 → 千代ヶ丘 9:26
  小田急バス 新07系統 [よみうりランド→新百合ヶ丘駅]
 よみうりランド遊園地から下ってくる新07系統は30分毎の運転で、前の便は出たばかりである。いっそ歩いた方が早いのだが、この先黒川での接続が悪く結局同じ行程に回帰してしまう。ならば1日乗車券もあることだし、バスを待つ。発車間際にお客さんが2人現れたが、やって来たバスは空っぽだった。

 住宅街の中を少し登って、千代ヶ丘着。このバスは新百合ヶ丘駅行で、僕が目指しているのもまさにその新百合ヶ丘なのだがここで降りる。4つ先の麻生高校と下平尾の間、両バス停とも川崎市麻生区内にあるにもかかわらず、その中間地点でバスは100mほど東京都(稲城市)にはみ出してしまうのである。ストイックではあるが、外周の旅と銘打った以上他県に踏み込むのは宜しくない。

千代ヶ丘−新百合ヶ丘駅
(5) 千代ヶ丘 9:40 → 新百合ヶ丘駅 9:50
  小田急バス 新02系統 [千代ヶ丘→新百合ヶ 丘駅(一丁目経由)]
 千代ヶ丘始発の新02系統は、新07系統より東寄りを通る。こちらならば神奈川県のみを通って新百合ヶ丘まで行くことができる。15分間隔となかなかの頻度であるのだが、わずか1分前に出て行ったばかり。なんだか意地悪をされているようだ。

 待っている間に乗客の列が伸びていく。定刻に発車したノンステップバスはこまめに停車しては車両を歩道へ傾けて、あっという間に車内は満員になる。これほど混むバスは今日初めてで、きちんと公共交通として機能している姿に嬉しくなってくる。

 果樹園から住宅街、商業地域と車窓が目まぐるしく変わって麻生区役所前着。こちらの方が駅に近いらしく、3分の2程度の客が降りてしまう。いったん谷筋に下って、ぐるりと回りこむと新百合ヶ丘駅のバスターミナルである。

新百合ヶ丘−黒川
(6) 新百合ヶ丘 10:01 → 黒川 10:07
  小田急電鉄 多摩線 各停 [新百合ヶ丘→唐木田]
 新百合ヶ丘からは小田急線でいったん北上する。3番線に停車していたのは3000系。あいも変わらずコメントする気も起きないデザインであるが、あまりに増殖したものだから段々見慣れてきた。

 多摩線の各停だから、当然のごとく空いている。麻生川を高々と渡るとニュータウンの丘に取り付き、こまごまと停車する。どの駅もリニューアルされたばかりで真新しく、長年放置状態にあった多摩線にもようやく陽が当たるようになってきたようだ。ただし、どの駅も全く同じデザインであるのはいただけない。酔っ払って帰ってきたら、確実に降り間違えそうである。

 さすがに電車は速く、あっという間に黒川着。いつの間にか、午後半日は無人駅扱いになっていた。

黒川−柿生
(7) 黒川 10:20 → 柿生駅北口 10:33
  小田急バス 柿24系統 [若葉台駅→柿生駅北 口]
 駅は綺 麗になったけれど、駅前広場にバスが乗り入れてこないのは相変わらずである。鶴川街道まで下って高架下でバスを待つ。稲城市方面と柿生を結ぶ柿24系統である。

 柿24系統は概ね1時間に2本程度の運転だが、パターンダイヤとは対極にある走り方をしている。僕が待っているのは10時18分発だが、前便から42分も間隔が開いているのに対し、次のバスはわずか12分後にやって来る。傑作なのは平日の9時台で、12・13・14分と3台続行した挙句次は1時間後である。やる気があるのだろうか、小田急バス。

 バスは無人でやって来た。暫くはニュータウンの外縁のような所を走っていたが、多摩線から遠ざかるにつれて周囲は素寒貧としてくる。突然道が狭くなって津久井道を越えると柿生駅のだだっ広いバスターミナルに着いた。柿生は小田急小田原線で新百合ヶ丘の西隣の駅である。何のことは無い、電車とバスで麻生区の北西に伸びた"でっぱり"を往復してきただけである。

柿生−中谷都
(8) 柿生駅北口 10:59 → 中谷都 11:14
  小田急バス 柿25系統 [柿生駅北口→柿生駅北口(寺家ふるさと村循環)]
 昔ながらのバスターミナルの風情を漂わせる乗り場で待つことしばし、行先表示のやたら細かい循環バスに乗って小田急線を越える。微妙に渋滞気味である。この道はセンター試験を受けに桐蔭学園に向かった道であり、また市が尾から若葉台までレアバスに揺られた区間でもあり少々懐かしい。右手に鶴見川がちらりと姿を見せる。川向こうは東京都(町田市)だ。

 川崎から横浜市に舞い戻ると上鉄鴨志田口で、ここを右折する。4車線道路に乗って軽い峠越えがあり、バスはカーブを切りながら鴨志田団地の中へと下っていく。

中谷都−こどもの国
(9) 中谷都 11:34 → こどもの国 11:41
  小田急バス 柿21系統 [柿生駅南口→こどもの国]
 本日7本目、そして恐らくこの旅最後となる小田急バスは柿21系統。柿生駅南口を起点に神奈中の牙城・町田に乗り込む勇ましい路線だが、途中のこどもの国止まりを含めても1時間に1本程度しかない。鴨志田団地からのメインルートは東急バスの青葉台駅行で、交差点を銀色のバスが盛んに行きかっている。こちらはぼうっと待つしかない。

 それにしても目の前のパン屋さんの賑わいは大したもので、次から次へと車が止まって店内に人だかりが出来る。ここで駐禁を取ったら稼げるだろうなあと、邪なことを考える。この店、そういえばアド街に出ていたような気がしてきた。1つ買ってみようかと思いついた頃には、バスの時刻が迫っていて動けない。

 やって来たバスは空っぽだった。中で運転手が、慌てて運転席の柵をセットするのが見える。まさかこんな場所から乗客があるとは思ってなかったのであろう。

 バスは大学や研究所に囲まれた、どこか薄暗い道を右へ左へさ迷う。急に見覚えのある一角に出ると、「小田急バスをご利用いただきありがとうございました」と放送がかかりこどもの国に到着する。

こどもの国−長津田
(10) こどもの国 11:51 → 長津田 11:57
  横浜高速鉄道 こどもの国線 各停 [こどもの国→長津田]
 こどもの国へ行く時間帯とも帰る時間帯ともずれているのだが、車内は混んでいた。大半は大学生である。香山リカのような細長いメガネをかけた女子大生が、やたらと多い。

 こどもの国線は、かつて観光客専用だったものを通勤電車にリニューアルした路線である。長津田手前の急カーブには、騒音悪化を憂慮して「通勤線化反対」という立看板が長らく鎮座していたが、いつの間にか「静かに走ってね」という文句に変わっていた。ちょっとは現実を認めたようである。

長津田−若葉台南
(11) 長津田駅 12:18 → 若葉台南 12:34
  横浜市交通局(バス) 40系統 [長津田駅→若葉台中央]
 長津田は田園都市線と横浜線が接続するターミナルだが、駅前は今ひとつ垢抜けない。傍らにどーんと建つ「田奈農協」が全てのような気がする。ここに東急ストアでも建っていれば、立派に多摩田園都市の仲間入りが出来ると思うのだがどうしようもない。

 横浜市の端の方という立地のためか、駅前広場に乗り入れるバスは東急・市営・神奈中と多様である。若葉台へ向かう40系統は、神奈中のサイトで調べると1時間に1本しかないが、実は横浜市との共同運行で30分間隔となっている。僕が乗ったのは市バスであった。運賃は距離制で、運転手に下車地を自己申告して前払いする。瀬谷や金沢等、均一運賃地域に接したエリアで時々見られる形態である。

 バスは駅前を出ると真っ直ぐ南下する。区画整理したばかりと思しき新しい道だが、どうにも渋滞気味である。そのうちやたらとでかいAPITAが現れて、ここで7割ほどの乗客が降りた。東名高速を渡り、霧が丘団地へとバスは入っていく。

 霧が丘団地と南隣の若葉台団地内のバス経路は極めてややこしい。青葉台・十日市場、長津田、三ツ境、鶴ヶ峰と各方面からバスが乗り入れて、団地内を思うがままにぐるぐる周回している。若葉台団地を時計回りに走る40系統は外周ルートに相当せず、霧ヶ谷で降りて長津田南周りで若葉台中央へ、さらに地区公園経由便限定で大貫橋へと至るのが正しいルートだが、あまりに面倒なので省略する。

 「霧高祭」とアーチがかかった高校の前を抜け、団地群の間をすり抜けていると、いつの間にか霧が丘から若葉台に入っていた。若葉台は地元・旭区である。我が家は神奈川県の真ん中へんだと思っていたのだが、まさか外周の旅で旭区を経由するとは思わなかった。

 若葉台南で下車。定刻より2分遅れている。

大貫橋−下鶴間
(12) 大貫橋 13:07 → 下鶴間 13:25
  神奈川中央交通 横04系統 [横浜駅西口→鶴間駅東口]
 次に乗るのは鶴間駅行の横04系統である。運行は神奈中バスで、県央エリアに圧倒的なシェアを持つ、全国最大のバス専業事業者がついに登場する。ただし、横04系統は若葉台団地を経由せず、南側の国道16号線の旧道のそのまた旧道を真っ直ぐ通過してしまう。この間をつなぐ路線もあるのだが、短距離だからここは徒歩連絡とする。

 若葉台南から500m程離れた大貫橋バス停を横04系統が通過するのは12時37分である。40系統が遅れたから、あと3分しかない。バスを降りるや、僕は走り出した。両バス停の間には、あの餘部鉄橋を髣髴とさせるような見事な水道橋が架かっているのだが、そんなものには目もくれずに走りに走った。

 大貫橋に着いたのは37分ジャスト。横04系統は、横浜駅西口から16号線を延々と走ってくるバスである(余談だが、「鶴間駅」という行先は横浜駅を発着するバスの中でもとりわけマイナーだと思う。初めて見かけた時は「鶴見駅」かと勘違いした)。定刻通り現れるはずは無い。どうやら間に合ったようだ。

 息を弾ませながらベンチに腰かける。3分。5分。横04系統は現れない。三ツ境駅行の相鉄バスや市バスばかりがやって来る。不安になってきた。タッチの差で逃げられてしまったのだろうか。

 13時02分、市バスの5系統がやって来た。横浜駅から横04系統と同じ経路を走ってくるバスである。時刻表を参照すれば、12時55分発が遅れてきたものに違いない。とすれば、やはり12時37分発は行ってしまったのであろう。がっかりである。

 さらに待つことしばし。次の13時04分発の横04系統が3分遅れでやって来た。お客さんは5名程度。三菱ふそう製のボディで、「点検実施済」というちょっと不安になるシールが2枚も貼ってある。

 今日は多摩・町田に入らぬよう延々と迂回してきたが、この辺りが南端である。保土ヶ谷バイパス上川井ICを過ぎると、バスは渋滞にはまった。南側は米軍の上瀬谷通信隊施設が広がっていて、なんとしても返還させたい気分になる。国道246号を越え大和市に入ると渋滞は解消したが、すぐ先でバスは左折する。なんだか渋滞を味わうためだけに乗ったようなバスだった。

下鶴間−中央林間駅
(13)〈通算24〉 下鶴間 13:42 → 中央林間駅 14:05
  大和市コミュニティバスのろっと 北部ルート(左回り) [中央林間駅→中央林間駅]
 下鶴間 は相当古い集落のようで、大山阿夫利神社との由来を記した社があったり、「ふるさと館」と称して古民家が保存されていたりする。20分程待っていると鶴間駅の方向から、大和市が運営するコミュニティバスがやって来た。どんな車両かと楽しみにしていたが、神奈中バスの小型車であった。運賃は前払い100円均一。良く乗っている。

 小型のボディを生かして、バスは路地を快調に走る。経路の大半は道幅が狭く、住宅街をぐるぐると遠回りかつ丹念に回っていくのもいかにもコミュニティバスらしい。右手にちらりと境川を眺め、田園都市線をくぐり、つきみ野の住宅街をさ迷い、つきみ野駅で大半のお客が下車する。もうちょっとだけ走って、中央林間駅が終着となる。バスはなぜか駅前に乗り入れず、建物の陰にひっそりと停車した。

 まだ14時だが、大貫橋の乗り遅れのせいでこれ以上進んでも接続が悪い。ここが外周ルート上最も自宅からアクセスしやすいという面もあるので、今日はこれでおしまい。次回は前半の山場と目される、津久井郡に入れるはずである。


(つづく)

2006.11.30
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