関東私鉄しりとり&サイコロの旅  第12回 


 2012年11月20日(火)、思いっきり早起きして年賀状用の写真を撮りに出かける。今年の撮影地は東京都大田区の多摩川浅間神社で、近所のオジサマオバサマ方が太極拳に励むのを横目に、川霧が立ち昇る多摩川に向けてシャッターを切った。すっかり日が昇りきる頃、フィルムを使い切る。このまましりとりに突入しよう。上機嫌で石段を降り、東急多摩川駅から電車に乗った。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
多摩川 → 大岡山 東急目黒線 急行 浦和美園 7:41 7:45
大岡山 → 旗の台 東急大井町線 各停 大井町 7:48 7:51
旗の台 → 石川台 東急池上線 各停 雪が谷大塚 7:56 8:00


 朝ラッシュ時のさなか、目黒線の急行は当然のように混雑していた。ホームドアの完備された近代路線ではあるけれど、その分だけ動作はまだろっこしい感が否めない。そのせいかズルズルと遅れて、大岡山到着時に遅れのお詫び放送が流れる。肉声ではなく用意された音声だったという事は、うがった見方をすればそれだけ遅れやすいのだろう。後続列車も遅れているとかで、大岡山でも更に2分停車していた。

 高校生がやたら多い大井町線で旗の台へ。2面4線に拡張され明るい幕屋根が線路を覆う大井町線ホームに比べると、階下の池上線ホームは屋根もベンチも木製で、僕が子供の頃から何も変わっていないように見える。やって来たのは新7000系で、外観は奇抜だが木目調と緑色を組み合わせた車内の雰囲気は上品で落ち着いている。旧型車を大切に使う東急の姿勢は嫌いではないが、やはり新車のまぶしさは格別のものがある。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ → みなみさくらい → いたくらとうようだいまえ → えそじま → まくはり → りゅうまい → いおぎ → きたみ → みなとちょう → うのき → きざき → きよせ → せんげんだい → いけがみ → みたかだい →
51駅目
石川台   しかわだ   (東京急行電鉄池上線 / IK08 / 東京都大田区)
石川台駅舎 石川台駅名標 石川台


 池上線や多摩川線の大抵の駅がそうであるように、ごく小規模のひっそりとした佇まいである。駅舎は上下別々にホーム端に設置されていて、特に下り線側は古いながらも洋風のちょっとお洒落な姿をしている。北側に私立小学校があり、子供達が続々と坂を上っていく。商店街は南側で、途中八幡神社の脇で緩くカーブしている。アーチも鳥居を模したかのような形状だ。

 さすがは23区内、東急沿線といったところか、個人商店や住宅が並ぶ街並みには気品が感じられる。道行く人の身なりも良く、飼い犬(もちろん雑種ではない)を3匹も連れて散歩に興じる姿などいかにもセレブだ。駅の駐輪場までが立派なコンクリート建築で、我がアパートより立派に見える。

 意外な事に周囲の起伏は激しく、何気なく覗いた脇道がジェットコースター並みの急勾配になっておりビックリする。強力に冷え込んだ朝で、多摩川の向こう岸、武蔵小杉のマンション群がくっきりと見えていた。


52駅目の選択
駅名 会社 路線
板荷 東武 日光線
一ノ割 東武 伊勢崎線
一本松 東武 東上本線
稲城 京王 相模原線
京成稲毛 京成 千葉線
京王稲田堤 京王 相模原線


 本日は大忙しで、一度職場に立ち寄らなければならない。面倒ごとは早々に片付けたい。2・5、それに遠距離だが1が出ればこれから会社に行って、お昼頃からしりとりを再開できる。次の次、そのまた次の選択肢まで視野に入れると、5辺りが一番嬉しいのだが…。


サイコロ4  → 4 稲城


 そう上手くいくはずもなく、東京西郊の4。これで立ち寄りは午後回しだ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
石川台 → 旗の台 東急池上線 各停 五反田 8:20 8:26
旗の台 → 溝の口 東急大井町線 急行 溝の口 8:32 8:48
武蔵溝ノ口 → 稲田堤 JR南武線 各駅停車 立川 8:56 9:09
京王稲田堤 → 稲城 京王相模原線 各停 橋本 9:19 9:23


 石川台の狭いホームは通勤客で溢れていたが、電車が到着しても乗り込まない人が多い。1本後が隣駅の雪が谷大塚始発なのかもしれない。路面電車ばりの頻繁運転は大したものだが、長原手前から案の定というか、やっぱり閉塞して徐行運転となる。

 旗の台の混雑もまた酷く、上りホームでは急行を待つ客に対し「並んでもお乗り頂けない場合があります」と恐るべきアナウンスを流している。一方の下り急行は空席を残す状態で入線。自由が丘で大挙して待っていた大学生も乗り込まず、のんびりしたものである。もっとも、各停に追いついてしまったらしくここで時間調整、以降終点まで徐行が続いた。

 今日は(も?)田園都市線も遅れていて、溝の口のホームには次々ゆっくりと電車が入ってくる。乗り換え通路も大変な賑わいだが、こんな時間に団体が2組も集まっていて混雑に拍車をかけている。JRの発車案内には「団体 修学旅行 坂戸小」と実に細かいLED表示が出されていた。

 南武線もラッシュの流れとは逆なので、登戸でも客が入れ替わっただけでさして混みはしなかった。JR稲田堤駅には乗換駅の雰囲気は全く無く、秋津よりずっと下町的な路地を辿って京王駅に向かう。先程6を出していればここが目的地だが、もう少し電車に乗らねばならない。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ → みなみさくらい → いたくらとうようだいまえ → えそじま → まくはり → りゅうまい → いおぎ → きたみ → みなとちょう → うのき → きざき → きよせ → せんげんだい → いけがみ → みたかだい → いしかわだい →
52駅目
稲城      (京王電鉄相模原線 / 東京都稲城市)
稲城駅舎 稲城駅名標 稲城


 第6回で訪れた若葉台の隣駅で、こちらは正真正銘東京都内である。斜面にへばりついた格好の駅で、下りホーム側はコンクリ壁が立ちふさがって薄暗い。橋本寄りを武蔵野貨物線の高架が横切っている。

 改札を出るとすぐ右脇が南口で、広いロータリーをマンションが取り囲んでいる。一方、京王ストアや啓文堂書店の入居する駅ビルは北口に接しているが、脇のエスカレーターを降りても広場はごく狭く、駐輪場とスリーエフの他には何も無い。どちらが表口なのか判断しかねるつくりである。ちなみに稲城市役所は南側、JR稲城長沼駅との中間地点にあるらしい。

 市名を名乗る駅だが中心市街地の雰囲気は皆無で、マンションと住宅ばかりが続くが、同じ道路に面した常楽寺というお寺さんだけが山間の雰囲気を漂わせている。「平成狸合戦ぽんぽこ」の時代そのままの雰囲気、と感じ入ったが由緒を見ればそれどころではなく、1558年再興の大変な古刹であった。


53駅目の選択
駅名 会社 路線
北大宮 東武 野田線
北鹿沼 東武 日光線
北久里浜 京急 久里浜線
北越谷 東武 伊勢崎線
北野 京王 京王線他
菊名 東急 東横線


 ダントツに近いのは5。6もまあまあ、他もそれほど遠くはないそこそこの選択肢である。2を除いては。


サイコロ2  → 2 北鹿沼


 うわあ。やってしまった。これ、会社に辿り着くのか?


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
稲城 → 調布 京王相模原線 快速 新宿 9:56 10:06
調布→ 新宿 京王線 準特急 新宿 10:07 10:23
新宿 → 新鹿沼 JR湘南新宿ライン 他 特急スペーシアきぬ 鬼怒川温泉 10:35 12:00
新鹿沼 → 北鹿沼 東武日光線 普通 東武日光・
会津高原尾瀬口
12:06 12:09


 快速電車は多摩川を渡ると、畑の中をぐいぐいと下がってトンネルに入った。8月に地下化された調布駅には胸の高さほどのホームドアが設置されていて、電車は慎重に停止位置を合わせる。停止前に向かいの準特急の発車ベルが鳴り始めたが、勿論接続は取る。次の布田のホームドアは背丈を越える高さの密閉型で、通過列車対策かなと思ったが、国領では低いタイプに戻ってしまう。よく分からない。

 先行列車に詰まらされる事もなく、新宿には定時到着。時間の都合もあり、ここからは東武直通特急で鹿沼にひとっ飛びする。接続は12分と極めつけに良いが、いささか良すぎる。急ぎ足でJR西口地上改札へ向かうと、当日券売場を発見。2社直通の特急券と乗車券を所望すると、係の女性が凄まじい速さでキーを叩く。後ろに並んだ男性は「南草津まで」と一言。群馬県かと思っていると、「京都までの特急券…」と付け加えている。滋賀県だ。当日券専用のブースだから急ぎの客ばかりで、係員は全国津々浦々の小駅まで把握して瞬時に発券せねばならない。激務だ。

 ともあれ切符は無事入手できたが、スペーシアは5番線からの発車である。配線改良工事の際に「あずさ」が疎開していた仮設ホームの名残で、ほぼ代々木じゃないか、と突っ込みたくなるほど南に偏った箇所にある。延々と地下通路を辿り、そろそろかと期待した頃に「ここから60m」の表記が現れる。やっとホームに上がっても、停止位置は更に先。自席は先頭から5両目。ようやく座った時には発車3分前だった。

 東武直通の特急「スペーシアきぬ」3号はオレンジと水色の帯を巻くリニューアル車での運転で、第2回で乗った未更新車に比べるとピカピカである。平日なのに窓際が全て埋まる盛況ぶりだが、池袋に着くと背後の女性2人組から「池袋からでも乗れたじゃん」と会話が聞こえてくる。直通運転花盛りの昨今だが、一般旅客の地理感覚なんてそんなものである。「指定のお座席以外にお座りの方と個室をご利用の方は〜」と丁寧な検札の案内が自動で流れるが、続く英語放送では"Your ticket maybe checked."随分アッサリしている。

 列車は小刻みな加速を繰り返しながらJR宇都宮線を疾走したが、栗橋手前の東武線交差部付近から減速し「乗務員交代のため停車します」と放送がかかる。JRの乗務員が線路脇を去っていくのを見送ると25km/h程度まで加速しノッチオフ。室内灯が消える。JRと東武のセクションだが、一般客にはどうでもいい話で、車内の反応は実に薄い。

 栃木を過ぎると、窓の外には農村の風景が広がる。新鹿沼で乗り継いだのは普通電車。快速と区間快速の運転が切り替わる中途半端な時間に設定された列車で、6両も繋いでいるのに10人ほどしか乗っていなかった。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ → みなみさくらい → いたくらとうようだいまえ → えそじま → まくはり → りゅうまい → いおぎ → きたみ → みなとちょう → うのき → きざき → きよせ → せんげんだい → いけがみ → みたかだい → いしかわだい → いなぎ →
53駅目
北鹿沼   たかぬ  (東武鉄道日光線 / TN19 / 栃木県鹿沼市)
北鹿沼駅舎 北鹿沼駅名標 北鹿沼


 新鹿沼〜北鹿沼間の東側には住宅街が広がっていたが、鉄道利用を考慮した開発ではなかったようで、北鹿沼駅周辺は典型的なローカル駅の佇まいである。無人駅で、駅舎は竜舞と同様のプレハブ。その先にコンクリで固められた不自然な空地があり、どうやらここが元の駅舎の跡らしい。

 駅に面した商店はなかったが、住宅の裏手に煙草屋を兼業した駄菓子屋が1軒。緩くカーブした細い道に沿って、新旧の住宅が並んでいる。傍らには道祖神。通行人の姿は無く、郵便局のバイクの音だけが辺りに響く。駅裏には畑が広がり、小山を背負った寺院が町の要とばかりに重厚な構えを見せている。

 突飛なものは何も無いが、心の和む田舎の光景である。しりとりでもしなければ絶対に降りなかった駅だが、来てよかったと思う。


54駅目の選択
駅名 会社 路線
馬込沢 東武 野田線
松原団地 東武 伊勢崎線
京成幕張本郷 京成 千葉線
町田 小田急 小田原線
町屋 京成 本線




 通算3度目の「ま」は5択。タイムリミットが迫っており、立ち寄れるのは2と5だけだ。ただし3なら職場から帰宅途上に寄り道しても良い。1も同様。4なら今日は完全終了だ。


サイコロ5  → 5 町屋


 無理なく訪問できる5が出た。大当たり、と喜んでよさそうだ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
北鹿沼 → 北千住 東武日光線 他 区間快速 浅草 12:31 14:22
北千住 → 町屋 東京メトロ千代田線 各駅停車 代々木上原 14:27 14:30


 町屋の隣駅、北千住までは区間快速で直行する。遠いが楽な道のりだ。新鹿沼の駅前には「ドリームツリーからスカイツリーへのメッセージ 祝・東京スカイツリーオープン」と横断幕が掲げられている。ドリームツリーとは何ぞや。新大平下では「焼きそば・ポテトフライ専門店」なる店舗も発見。なんだか妙な土地柄である。

 最後尾車両はガラガラでのんびりしていたが、爺さんが車掌室へやって来て赤羽への行き方をしつこく尋ね始めた。停車駅が接近してもお構いなしで車掌も困惑が隠しきれていない。やっと引き揚げたと思ったら、今度は婆さんを引き連れて同じ質問の繰り返し。柳生でホームに助役が出るほどの大量の高校生が乗り込み、栗橋でどっと降りたので、老夫婦がちゃんとJRに乗り換えられたかどうかは分からない。と言うか、知らない。

 長い長い各停区間が過ぎて東武動物公園まで辿り着けば、あとは春日部しか止まらない。ホームの小学生や高校生は近距離通学なのか、もはや快速には見向きもしない。西新井を通過すれば、スカイツリーが間近に迫ってきた。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ → みなみさくらい → いたくらとうようだいまえ → えそじま → まくはり → りゅうまい → いおぎ → きたみ → みなとちょう → うのき → きざき → きよせ → せんげんだい → いけがみ → みたかだい → いしかわだい → いなぎ → きたかぬま →
54駅目
町屋      (京成電鉄本線 / KS04 / 東京都荒川区)
町屋駅舎 町屋駅名標 町屋


 地下鉄の階段を登ると、踊り場からパチンコ屋に直結している。京成駅の入口にはキムチを売るおばちゃんが陣取り、再開発ビルに取り付けられた横文字のネオンは、ヨーカドーかと思いきや赤札堂である。要するに下町だ。耐震工事中の京成の高架線の下を、都電が唸りをあげて走り去っていく。退潮傾向にあるはずのマックが京成線の両側に計2軒、ツタヤも2軒あって賑わっている。

 駅周囲には再開発型のマンションも点在しているが、町をほぼ埋め尽くすのは2階建ての家屋で、車の入れない路地の両側に隙間を空けずびっしりと並んでいる。「階段は静かに」と注意書きが貼られた古いアパート、軒先に並ぶ植木。道は新築家屋の前だけ申し訳程度に拡幅されているが、折れ曲がってどこにつながるか見当もつかない。隙間から見えるマンションと高架線路を頼りにぐるぐる彷徨う。

 駅へ戻る道すがら、「ベルギービールの飲めるイタリアン」なるレストランを発見。ベルギーとイタリア、どっちなんだ!と突っ込みたくなるが、この緩さも下町らしいのかもしれない。


55駅目の選択
駅名 会社 路線
八木崎 東武 野田線
柳生 東武 日光線
野州大塚 東武 宇都宮線
谷津 京成 本線
西武柳沢 西武 新宿線
山田 京王 高尾線


 本日はこれで終了。ただし4なら、帰りに寄るのも一案。最善は「わ」終わりの5。あとはどれも遠い。特に3は回避して欲しいところだ。


サイコロ5  → 5 西武柳沢


 おおっ、5が出た。町屋に続く最善の一手。とことんついている。

 …と喜んだのは大間違いだったのだが、それはまた次の話。


(つづく)

2013.2.18
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