関東私鉄しりとり&サイコロの旅  第9回 


 2012年9月12日(水)、今日の最初の目的地は群馬県の東小泉だ。さんざん乗った感のある東武だが、スカイツリーラインからのスタートは第6回以来となる。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
牛田 → 北千住 東武スカイツリーライン 普通 竹ノ塚 7:45 7:47
北千住 → 館林 東武スカイツリーライン 他 特急りょうもう 赤城 7:52 8:41
館林 → 東小泉 東武小泉線 普通 西小泉 8:51 9:05


 牛田から一駅移動して、北千住で「りょうもう」の特急券券売機に並ぶ。第1回では40分早い1号に乗ったが、あれは土休日のみの運転なので、今日は7時52分発の3号が一番電車となる。朝の時間にゆったり座って北関東へ向かう貴重な列車、窓際は既に満席だった。通路側席にはテーブルも無く、朝食に難儀する。これで1時間弱、料金1,000円はちょっと割に合わない気がする。

 館林の小泉線ホームは、伊勢崎線下りホームの先に切り欠き式に設置されている。上りホームの先端には同様に佐野線ホームが設けられていて、なかなか複雑な構造だ。高架化され真新しい太田もよく似たつくりだから、東武はこの手の配線が好きなのだろう。水平移動は長いが垂直移動は少ないから、結果的にバリアフリーの時流にも合致している。

 小泉線は東小泉を中心に館林・太田・西小泉の三方に路線を伸ばす、少々複雑な形をしている。館林〜東小泉〜太田のルートは足利市を経由する伊勢崎線よりも短距離だが、バイパスとして機能させる気は無いようで、館林〜東小泉〜西小泉が本線、東小泉〜太田は枝線で赤城線との一体運用になっているようだ。東小泉の接続が良ければ伊勢崎線より太田まで先着するケースもあるのだが、どうやら偶然の産物で、意図的なダイヤには見えない。

 電車は2両ワンマンで、先頭車の乗客は4人。後続の区間急行が着くと9人に増え、調子外れのメロディが鳴り響くとドアが閉まる。伊勢崎線と全く差が無い眺めが淡々と続いて東小泉着。向いにはやはり2両の太田行が待っていて、同時に発車していく。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび →
36駅目
東小泉   がしこいず   (東武鉄道小泉線 / TI44 / 群馬県邑楽郡大泉町)
東小泉駅舎 東小泉駅名標 東小泉


 分岐駅だがホームは島式1面のみで、各方面の列車を上手く捌いているようだ。跨線橋を降りると駅舎はコンクリート造りで、瓦屋根の古い駅舎が多い東武としてはむしろ珍しい。ローカル線ながらも主要駅だぞ、というプライドが感じられる。中央に噴水を囲んだ駅前広場もきちんと整備されているが、バス・タクシーの類は見当たらない。

 きっちりと区画整理された住宅街を抜けると、国道にぶつかる。往来は激しいが歩行者の姿は無く、交通安全標語の看板や横断幕がやたらと目に付く。角のクリーニング屋の2Fに教会が入居していて、ブラジル人が多いとされるこの辺りならではと感心する。


37駅目の選択
駅名 会社 路線
三鷹台 京王 井の頭線
港町 京急 大師線
南宇都宮 東武 宇都宮線
南大塚 西武 新宿線
南桜井 東武 野田線
南羽生 東武 伊勢崎線


 かなり地理的にばらついた面々である。これはもう、6しかないだろう。東京へ戻るルート上、埼玉県のほぼ北端である。次善は春日部から脇にそれる5。北関東大移動の3と神奈川県の2は回避したいところだ。


サイコロ5  → 5 南桜井


 まあOK。都心まで戻らずに済んだのだから上出来だ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
東小泉 → 館林 東武小泉線 普通 館林 9:24 9:38
館林 → 久喜 東武伊勢崎線 普通 久喜 9:56 10:21
久喜 → 春日部 東武伊勢崎線 他 急行 中央林間 10:26 10:39
春日部 → 南桜井 東武野田線 普通 10:48 10:55


 西小泉始発の館林行は太田方面からの当駅止まりと同時に入線してきた。館林行から往路で見かけた記憶のあるオッサンが降りてきて、向かいの折り返し太田経由赤城行にそそくさと乗り移っていく。乗り鉄だ、乗り鉄。

 東小泉での接続は見事だったが、その分館林では随分待たされる。小泉線の客はほぼ全員ホームの待合室に入り、伊勢崎線上り電車を静かに待つ。風が涼しい。長い夏もどうやら終わりそうな気配が漂ってきた。久喜まで出てメトロ8000系の急行電車に再度乗り換え。地下鉄車両の中から眺めると、沿線風景がよりいっそう田舎っぽく見えてきた。

 春日部駅は東京近郊にありながらJRの地方駅を連想させるような雰囲気のある駅で、3面5線の妙な配線といい、地上駅舎と相当に古びた跨線橋といい、野田線乗り場の中途半端な離れ方といい、ホームの立ち食いスタンドの佇まいといい、実に味がある。そして駅員さんのアナウンスが上手い。落ち着きと勢いを同時に感じさせる、魅力的なパフォーマンスを展開している。良い駅である。

 南桜井はその春日部から東へ2駅。単線区間だが運行本数は多いので、1駅毎に行き違いがあった。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ →
37駅目
南桜井   なみさくら   (東武鉄道野田線 / TD12 / 埼玉県春日部市)
南桜井駅舎 南桜井駅名標 南桜井


 相対式ホーム2面の平凡な駅だが、ここから柏寄りは複線となっている。南口へ降りると目の前には個人商店が数軒固まっているが、残念ながらシャッター街と化している。対照的に駅1Fではサンクスが開店準備中で、駅前広場も大きく綺麗に整備されている。地図を見ると周囲には庄和という名を冠した施設が多く、春日部市に吸収された代わりに周辺整備にお金をかけている、という雰囲気がありありと伝わってくる。ちなみに駅舎のメインテナントは東武系のスポーツクラブで、広場からは駅自体よりもそちらの方が明らかに目立っている。

 一方の北口もまた整備中で、スーパーとの間の空地でブルドーザーが唸りを上げている。南北は駅コンコースのほかに地下道でも結ばれているが、壁にペイントされた絵が妙に怖い。明るい絵なのに怖い。NHK「みんなのうた」にこんなタッチの絵が出ていたような気がする。

 なお駅名は「南」桜井だが、地図を幾ら眺めても本家「桜井」は見つからなかった。


38駅目の選択
駅名 会社 路線
井荻 西武 新宿線
池上 東急 池上線
石川台 東急 池上線
板荷 東武 日光線
板倉東洋大前 東武 日光線
一ノ割 東武 伊勢崎線


 現在地は埼玉県南部。北へ向かうも南へ向かうも便利な立地を反映して、絶妙な顔ぶれが並んだ。4はかなり遠いが、前々回前回の大森町→西武秩父の流れを教訓とすれば、ここで北関東を攻めておく手は大いにアリだ。もちろん、都内に向かっても一向に構わない。

 ちなみに一番近いのは6で、南桜井からわずか3駅目。一見絶好の選択肢だが、実は次の「り」がくせ者なのである。近いけれど、これが一番のハズレくじだ。


サイコロ5  → 5 板倉東洋大前


 さほど遠くは無い北関東。ほぼベストと言って良い目だろう。OKだ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
南桜井 → 春日部 東武野田線 普通 大宮
11:17 11:25
春日部 → 南栗橋 東武スカイツリーライン 他 急行 南栗橋 11:36 11:53
南栗橋 → 板倉東洋大前 東武日光線 普通 新栃木 11:54 12:09


 野田線で春日部まで戻り、スカイツリーライン下りホームで時刻表を覗き込む。次の電車は11時28分発の区間準急東武動物公園行だが、なぜか久喜行がやって来た。どちらにせよ日光線には入らないのでこれはスルー。栃木方面への接続が注記されている電車を探すと、25分に急行が出たばかり。次の急行もそのまた次の急行も南栗橋から先の接続は無く、12時22分の区間快速まで1時間近く待たなければならない。時刻表を信じればそうなるのだが、南栗橋以遠は特急を別にすれば3本/hの運転だから計算が合わない。電光掲示板を確かめれば、35分の急行に「新栃木行に接続」としっかり表示されている。ずいぶんデタラメな時刻表である。クレームは来ないのだろうか。

 10両急行はガラガラの状態で日光線へと入っていく。目に付く乗客は車端の老人2人連れくらいで、会話の内容から南栗橋の済生会に通院しているものと察せられる。年相応に声が大きく、うるさいなあと内心イライラしていたのだが、そのうち空襲の苦労話が始まった。いや、これは敵わない。参りました。ごめんなさい。

 ご老人方は案の定新栃木行には乗り継いでこなかった。利根川を渡り、渡良瀬川の堤防に沿って進むと板倉である。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ → みなみさくらい →
38駅目
板倉東洋大前   たくらとうようだいま
(東武鉄道日光線 / TN07 / 群馬県邑楽郡板倉町)
板倉東洋大前駅舎 板倉東洋大前駅名標 板倉東洋大前


 何度か書いた事ではあるが、この辺りの県境は複雑に入り組んでいる。日光に向かっているはずなのに、板倉町は群馬県なのである。一駅手前の柳生は埼玉県、次の藤岡は栃木県と目まぐるしい事この上ない。

 15年ほど前、開業と同時に快速が停車したというなんとも恵まれた駅で、2面4線のホームも橋上駅舎もまだ新しさを保ちつつ堂々と構えている。西口側は駅の脇にショッピングセンターがしつらえられ、新興住宅地の中を目抜き通りが真っ直ぐ貫いていく。改札口の案内表示には「板倉ニュータウン販売センター→」とあり、わざわざ「販売センター」と付けるからにはまだまだ発展途上なのだろう。

 駅構内でニュータウン以上にPRされているのは東口側の渡良瀬遊水地で、ラムサール条約に登録されたとの案内が誇らしげに掲げられている。足尾銅山の鉱毒処理のために作られたという歴史は完全に無視されている。東洋大向けと思われる単身アパート群を抜けると、田園風景の中に遊水地へと繋がる遊歩道が現れた。傍らの小学校から、お昼の放送が聞こえてくる。「朝ごはんはきちんと食べましょう」とか何とか、トーク系の番組構成のようだ。

 10分ほど歩くとボードセイリングのお店が現れ、群馬県道にぶつかり遊歩道はぷっつりと途切れた。県道を渡り堤防を越えるとバリケードが設置されているが、自動車向けのものだと解釈して乗り越える。驚くほど広い湖が、目の前に広がっている。周回道路を時折自転車が通過していくほかは、何も物音がしない。茫漠とした眺めを前に、しばし歩みを止めた。

 それにしても汗だくだくだ。3時間ほど前、ようやく夏が終わると期待したのはどうやら間違いだったらしい。もう9月も半ばだというのに…。


39駅目の選択
駅名 会社 路線
江曽島 東武 宇都宮線
荏原町 東急 大井町線
永福町 京王 井の頭線
江古田 西武 池袋線
江戸川 京成 本線
江戸川台 東武 野田線


 都内が4つ。現在地は群馬県だがほぼ南東端、極端に遠いわけではない。比較的東寄りで「わ」終わりの5が最良だろう。とは言え本日、牛田からスタートして以来東武しか乗っていない。なんだか1に呼ばれているような気がしてならないのだが、さて。


サイコロ1  → 1 江曽島


 来た。ホントに1が来た。北関東を極めよとの仰せ、目指すは宇都宮だ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
板倉東洋大前 → 栃木 東武日光線 普通 新栃木 13:10 13:28
栃木 → 江曽島 東武日光線 他 普通 東武宇都宮 13:40 14:12


 板倉東洋大前駅への坂道を下る途中、下りの区間快速が発車していくのが見えたが、心配無用ですぐ後ろを普通列車が追いかけてくる。案の定ガラガラである。やはりこの区間のダイヤはいびつな印象が拭えない。せめて区間快速が新栃木までは通過運転すれば良いと思うのだが。

 板倉ではファストフードはおろかコンビニも見当たらず、どうにもお腹が空いている。宇都宮線分岐駅の新栃木は改札内に何も無いと分かっているので、栃木で降りてみたが、売店も駅そばも無かった。寂しい思いを抱えつつ8000系ワンマン運転の東武宇都宮行に乗り込む。4両なのにわざわざ1両を弱冷房車に充てている。南栗橋方面にステンレス車、日光方面に6050系ばかりが入る現状では栃木の8000系はほぼ宇都宮線専用らしく、車内広告は宇都宮市のものばかりだ。車両番号がクハ84118と大きくインフレしているのが、いかにもこの形式らしい。

 発車間際に滑り込んできた両毛線と接続をとらずにあっさり動き出した8000系は、田んぼと工場と住宅が交じり合う光景の中を淡々と進んでいく。西川田から宇都宮市に入ると住宅ばかりになり、次駅が江曽島である。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ → みなみさくらい → いたくらとうようだいまえ →
39駅目
江曽島   そじ   (東武鉄道宇都宮線 / TN38 / 栃木県宇都宮市)
江曽島駅舎 江曽島駅名標 江曽島


 駅裏からパチンコ屋の音がじゃらじゃらと聞こえてくる。階段を下りると目の前には古びた個人経営の食堂や、氷屋といった商店が数軒。周りを歩いてもずっと住宅街が続いている。至って普通の都市郊外駅である。

 今日は北へ北へと進んできて、行くほどに車窓はローカルめいてきていたのだが、ここにきて町の香りがしてきた。駅前広場は無いが路線バスが乗り入れており、時刻表を確かめれば4本/hの頻繁運転をしている。ますます宇都宮が大都市に思えてきた。


40駅目の選択
駅名 会社 路線
馬込沢 東武 野田線
松原団地 東武 伊勢崎線
京成幕張 京成 千葉線
京成幕張本郷 京成 千葉線
町田 小田急 小田原線
町屋 京成 本線


 まだ14時過ぎだが現在地は宇都宮。もう一駅巡れれば上々だろう。2度目の「ま」だが1度目とは逆で、5が今日は行けないハズレ駅だ。残りは全部自宅へ帰る方向だから、むしろ恵まれたラインナップだと喜ぶべきだ。2なら今来た見た道を淡々と戻るが、それ以外はJRを使う方が早そうである。


サイコロ3  → 3 京成幕張


 うん、合格。ちょこっと寄り道して家に帰ろう。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
江曽島駅 → 宇都宮駅 関東バス 宇都宮駅 14:37 15:03
宇都宮 → 赤羽 JR湘南新宿ライン 普通
逗子 15:55 17:28
赤羽 → 上野 JR高崎線 普通
上野 17:32 17:42
上野 → 高砂 京成本線 普通
高砂 17:48 18:10
高砂 → 津田沼 京成本線 快速特急 成田 18:11 18:28
津田沼 → 幕張 京成千葉線 普通
ちはら台 18:30 18:35


 江曽島はJR日光線の鶴田からさほど離れていない位置にある。歩く事も考えたが、いい加減くたびれたので駅前からバスに乗り、まっすぐJR宇都宮駅へ向かう。数人居た乗客はすぐ降りてしまい一旦車内は空になるが、がんセンターから徐々に乗客がある。国道4号に入り、JR日光線のガードをくぐると東武西口バス停。すぐに右折すると東武宇都宮駅前バス停を通過する。駅前より西口バス停の方が明らかに駅に近いのはちょっと謎だ。中心街らしき街並みを通り抜けた頃、正面にJR駅が見えてきた。

 もはや空腹の極みだし、折角宇都宮まで来たので餃子屋を探す。駅周辺は風俗店と餃子屋しかない。県庁所在地の表玄関がコレでいいのだろうか。

 東武より早いからとJR駅まで来たが、もちろん東北新幹線ではなく在来線で帰る。電光掲示を見上げれば、運の良い事に快速がすぐに発車する。階段を小走りしたが、ホームにたどり着く前にぴしゃり。間に合わないのなら表示しないで欲しいのだが…。

 本日初めてのJRだが、東武から乗り移ると速い。強烈に速い。目まぐるしく流れる景色を眺めるうちにまぶたが重くなり、気がつくと小山まで戻っていた。あっという間だが、東京はまだまだ先。辺りはすっかり夕刻の気配だ。渡良瀬遊水地の向こう岸に見えたマンションが目の前に迫ると古河。次が栗橋で、どうにか馴染みのあるエリアまで戻ってきた。

 上野に着く頃には、すっかり陽は落ちていた。不忍口を出ると、目の前の再開発ビル、UENO3153の灯りがまばゆい。オープンはまだのはずだが、内覧会か何かを催している気配がある。これが表参道や渋谷ならマスコミがこぞって取材に来るのだろうが、全く取りあげられないのが上野の哀しさである。発車ギリギリの京成電車にからくも間に合ったが、夕ラッシュ時なのに座れてしまう。

 高砂で乗り継いだ快速特急は都営5300系だった。車内にNHKが広告を出しているのも、告知されている次の大河ドラマの舞台が福島なのもいかにもお役所らしい。津田沼で降りれば、待っていた千葉線は3500形未更新車。古い。これはさすがに古い。運が悪かった(良かった?)訳ではなく、千葉線は概ねこんなもんである。


あいおい → いけのうえ → えだ → だいじんぐうした → だいやむこう → うえの → のうけんだい → いくた → だいたばし → しばさき → きたいけぶくろ → ろくごうどて → てんのうちょう → うすい → いずみ → みずほだい → いえなか → かぞ → ぞうしき → きたかすかべ → へみ → みなみくりはし → しいなまち → ちとせふなばし → しずわ → わかばだい → いけじりおおはし → しもやまぐち → ちとせからすやま → ますお → おおもりまち → ちちぶ → ふくい → いずみたまがわ → わいあーるぴーのび → ひがしこいずみ → みなみさくらい → いたくらとうようだいまえ → えそじま →
40駅目
京成幕張    けいせいくは   (京成電鉄千葉線 / KS53 / 千葉県千葉市花見川区)
幕張駅舎 幕張駅名標 幕張


 幕張と言えば幕張新都心に幕張メッセ、ロッテの本拠地QVCマリンフィールドと揃った千葉市きっての花形スポットなのだが、それらは皆JR京葉線海浜幕張駅が最寄りで、ご丁寧に区まで違っている(臨海部は美浜区)。京成やJR総武線沿線から新都心へ通う人は非常に多いのだが、バスの大半は隣の幕張本郷駅から出るため、幕張の本家本元であるはずのこの界隈に華やかさは皆目見当たらない。直線距離なら本郷より幕張の方が新都心に近いのだが。

 このただでさえ寂しい立地に、総武線と京成千葉線の輸送力・利便性の差が追い討ちをかける。日の暮れた京成幕張駅前に、人の姿はまばらだ。駅施設も貧相極まりなく、小さな地上駅舎に券売機は2台、改札は3通路、ホームへは構内踏切を渡っていく。電照式の駅名標は、2つとも蛍光灯が半分切れている。新手の節電だろうか。

 駅前広場を囲むのは写真屋に補習塾に中華料理店に床屋。いずれも大手チェーンではない。侘しいなあと思っていると、路線バスがやって来た。本郷発着便は連接バスなのに、こちらはチョロQのようなショートボディ。さすがに満員だが、下車客の大半がJR幕張駅へ通じる路地に消えていった。

 さて、問題の「り」だ。


41駅目の選択
駅名 会社 路線



竜舞 東武 小泉線



緑園都市 相鉄 いずみ野線


 「り」なんかあるのか、と誰しも思う所だろうが、ある。それも2択だ。どちらも遠距離だが、いずれにせよ今日はここまで。ならばどちらでも一緒…では全く無い。来週横浜まで出かける用事があるので、緑園都市なら容易に足が伸ばせる。所用の終了時刻とサイコロの目次第ではその後1〜2駅回る事も可能だ。一方の竜舞はなんと本日のスタート地点、東小泉の隣駅である。まさに「振り出しに戻る」。勘弁してくれ。


サイコロ1  → 1 竜舞


 戻ったーっ。

 …戻ったよ。


利用区間 路線 種別 行先 発時刻 着時刻
幕張 → 津田沼 京成千葉線 普通
津田沼 19:00 19:07


 人が居ないだの古いだの、京成に対しネガティブな感情ばかり抱いていたら、帰りの電車は3304編成だった。1968年製造の第1編成。京成はおろか、首都圏屈指の古豪である。ああそれにしても、よく乗った1日であった。


(つづく)

2012.11.2
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