今度の旅はレアバスで・第19回



レアバスは謎を呼ぶ!?

藤沢神奈交バス 間15 三ツ境駅北口→鶴間駅東口




 2008年8月5日(火)、武道館へ行く用事ができたので会社を休んだ。前にもこんな事があったような気がするのだが、そうなると平日限定のレアバスに乗りたくなってくる。町田から出る神奈中の町28系統に目をつけたのだが、当日朝ちょっとモタモタしていたら間に合わない時刻になってしまった。とは言え折角の平日休み、無為に過ごすのは勿体無い。相鉄線に乗り、次の三ツ境で降りる。後々考えれば、自転車で行っても良い位の近さであった。

 町28系統に代わって今日乗るのは、藤沢神奈交バス(神奈中子会社)の間15系統である。「間」は小田急江ノ島線の鶴間で、各停しか止まらない駅の割にはバス便が多く集まっている。相鉄線瀬谷駅との間には、乗換駅の大和をショートカットして走る間14系統が1本/h程度走っているが、これが平日のみ1日1便三ツ境まで足を伸ばしてくるものらしい。

 この系統の最大の特色は、三ツ境駅の乗り場と経路にあると言っていいだろう。瀬谷区随一のターミナルである三ツ境には2つのバスターミナルがある。北口からは、若葉台団地やズーラシアへ向かう相鉄バス・神奈中バスが頻発している(少し前までは市営バスも姿を見せていた)。一方の南口ダイエー前のターミナルは神奈中専用で、戸塚方面へのバスが発着する。間15系統は北口発とされている
三ツ境駅乗り場
 さて、改札口を出て左側、開店待ちのお客さんが目に付くライフ(駅ビル)の前を過ぎると北口である。線路に沿って大和方向へ続くデッキの先がバスターミナルだが、キッパリ無視して逆側の階段から車道へ下りる。駅前ではあるが、目の前にライフが城壁のように聳える薄暗い道だ。たらたらと横浜方向へ坂を上る。確かこの辺にあったと思うのだがまさか廃止になったのだろうかと心配になってきた頃、ようやく街路樹の陰からバス停が姿を現した。

 停留所の名はバスターミナルと同じ「三ツ境駅北口」。しかし、辺りにバスの姿は無い。「このバス停に発着するすべてのバスにパスモが使えます」と誇らしげな案内文が掲げられているが、すべても何もここにバスがやって来るのは1日1回だけだ。

 この系統は鶴間駅側がベースとなっており、鶴間から同じ間15系統としてやって来た車が引き返す。転回スペースどころか停車用の車線さえ無いから、バスは定刻ジャストにやって来た。当然空っぽ、と思いきや10名を超えるお客さんが続々と降りてくる。思わぬ賑わいだが、顔ぶれにピンと来るものがある。ライフで開店待ちをしていた人達と年恰好が一緒である。時刻は10時05分、レアバスはレアバスなりにダイヤを工夫しているものらしい。

 もっとも、折り返し便の乗客は僕を含めても2名。さしずめ回送バスである。すぐに発車。そのまま鶴間に背を向けて進み、厚木街道にぶつかると右折して相鉄線を越える。もう一度、今度は厚木街道ごと右折すると出発時とは180度向きが変わっている。

 緩い坂を下ると、左手に南口のバスターミナルが現れる。しかし、既に北口(脇)でお客さんを乗せた我がバスは立ち寄らない。次の三ツ境駅前停留所(バスターミナルがやや離れているため、南口発のバスは駅正面で再停車する)も通過。乗客がいないのではなく、そもそも案内テープが流れない。他のバスが全て左折する富士見通り商店街交差点を直進。結局、南口のバスとは停留所を1つも共用しなかった事になる。

 なんともマイペースな間15系統の1つ目のバス停は瀬谷警察署前だが、ポールに書かれた次停留所名はなぜか逆方向の「三ツ境駅北口」となっている。次の二ツ橋はもっと悲惨で、ポールは神奈中では絶滅寸前のダルマ型、停留所名はどう見ても手書き、時刻表は剥がされたのか貼っていなかったのか見当たらない。申し訳ないが、粗大ゴミにしか見えない。それでも運転手はきっちり乗客の有無を確認し、「バス停よし」と声を上げた。

 二ツ橋のすぐ先で、瀬谷柏尾道路と斜めに交差しここで右折。両側に屋敷森らしき木々が迫る道で、幅がぐっと狭まる。続いて中原街道を越え、ここからは鶴間発の便と同じ経路を行く。往路のバスはここで中原街道に入り、南瀬谷−三ツ境間の相鉄バスと同じルートで線路をくぐって北口に至っている。三ツ境駅で方向転換できないために、ラケット状に循環する経路を辿っているわけだ。一見理屈は通っているが、北口なり南口なりバスターミナルに乗り入れれば解決する話 でありやはり不可解だ。

 ともあれ次の相沢原バス停からは、上下双方向にバス停がある。が、なぜか対向車線のみ相鉄仕様の緑色のポールが立っている。何がそんなに珍しいのか、道端でこちらに一眼レフを向けている人がいるが、無論他人の事は言えない。

 相鉄線を今度は踏切で越え、道幅の狭い坂を上ると瀬谷駅に出る。にわかに街並みが新しくなり、神奈中ばかりのバスターミナルに滑り込む。11名が乗車して10時19分発。この先は2〜3本/h程度のバスが同じ道路を走る。

 しばらくは良く整備された幅広の道を進むが、2つ目の本郷で早くも元の田舎道に戻ってしまう。農家や、農地を切り売りしたと思われる小住宅が建ち並んでいる。本郷原で乗客あり。ふと気づいたがこのバス、前乗り前降り後払いである。確かに僕も運賃をまだ支払っていないが、三ツ境駅では往路の乗客が後ドアからも次々降りてきた。はて、謎の多いバスである。

 道は右に左にうねり、沿道には火の見櫓が現れた。どうやらこの瀬谷柏尾道路、相当昔からある街道筋らしい。東名高速が眼前に現れると八幡神社前を乗降無く通過。瀬谷駅からの便は半数程度がここで折り返す。道端にごく普通にポールが立っているだけで、どうやって折り返すのだろうと首をかしげる。次の馬場屋敷で降車ボタンが押され、オバサマ方が続々と目の前の温泉施設に吸い込まれていく。神社止まりは、ここの駐車場まで延長した方が良いのではなかろうか。

 残った乗客は5人と、にわかに寂しくなってしまった。追い討ちをかけるように、道が混み始める。辺りは倉庫街で、はるか前方に赤信号が見える。国道246号と平面交差しているらしく、列は一向に進まない。しかも信号の手前には佐川急便の配送センター出口があって、次々に車が合流してくる。

 やっとの事で瀬谷入口交差点に辿り着き、バスは左折して246号に入る。大型車の流れに飲み込まれまいと必死に走り、すぐに右折。風景は一変してマンションが現れ、駅が近い事が窺い知れる。

 大和にこれだけのSCが要るのか、といつもながら唖然とさせられるオークシティの脇を抜ければ、鶴間駅は目の前である。が、バスは細かく右左折を繰り返し脇道に入った。鶴間駅東口にはロータリーが無いので迂回をして入らなくてはならない。まったく、ルート取りには苦労が耐えないバスである。10時48分、鶴間駅東口着。


(つづく)



2008.11.8
Copyright(C)tko.m 2008
第18回へ   第20回へ   お散歩ジャーナルへ   MENUへ


inserted by FC2 system